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2020年08月08日07:29

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義足でのボーイ・ミーツ・ガール 5

今夜は町の神社でお祭りである。
さおりんに誘われて一緒に行く事になった。
いったん、分かれて支度をするのであった。
何を勘違いしたのかシャワーを浴びる。
Tシャツに短パンでいいと言われても……。
そんな妄想をしていると、左足が無いのに気づく。
『また、挫折するよ』
そんな言葉が頭の中をよぎる。
まるで悪魔の呟きが聞こえるようであった。
わたしは舞い上がっていた気持ちが冷めていく。
さおりんを失うのか……。
左足を失い、T大を諦めて。きっと、さおりんも去っていく。
自室で髪を乾かしている時間は地獄であった。
不意に携帯を見るとさおりんからメッセージが届いていた。
『神社の隣の郵便局で待つよ』
メッセージ時間の指定もない、さおりんらしいな。
わたしは大急ぎで支度をして神社の隣にある郵便局に向かう。
そこには薄いブルーとピンクのアサガオの浴衣姿のさおりんにが居た。
「えへへへ、早かったかな?」
そう、外はまだ明るく出店も準備中であった。
「神社の本殿の裏で待とうよ」
わたしの言葉にさおりんが付いて来る。
本殿の裏は夏祭りとは思えないほどの静かさであった。
『また、失って、挫折するよ』
静寂の中でまた聞こえる。
「どうしたの?顔が真っ青だよ」
「ははは、水当たりでもしたかな」
わたしは必死に誤魔化す。さおりんは不思議そうにしていた。
それは、浴衣姿のさおりんにわたしは魅かれていた。
だから、なおさら、失った左足首が疼く。
わたしは目を閉じて蝉の声を聞く。
「さおりん、少し、側に居てくれないか?」
わたしの弱さをさおりんにぶつけてみた。
しかし、さおりんは足をぶらぶらして暇そうにしている。
わたしは大きく息を吐き言葉を探していた。

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