てんり〜、せ〜いね〜ん、すすめ〜われら〜
試合前の両校校歌の斉唱。有名な明治の校歌はボクも一緒に歌った。スタンドのファンも関係者ではなくとも同じだろう。
次は天理大学の番だ。天理は校歌ではなく学歌と電光表示板に示された。そして歌詞が出る。ええ?
ボクはすぐに歌い出した。天理高校の校歌だ。高校野球ファンならソラで謳える人も多いだろう。天理大学の学歌の斉唱は明治に負けないくらいに盛り上がった。もちろん応援に多くに人が来ていたこともある。だが、少なくとも昨年と帝京の校歌の時よりは・・・・
天理は試合開始2分半でトライを奪った。天理のキックオフで始まった試合、明治はボールを自陣で失いラインアウトからあっさりブラインドでボールを廻されてトライを許した。
同様に明治はキックオフからの攻撃で相手ボールを奪って敵陣で攻撃を続ける。明治はショートパスで中をガンガン突いてくる。そして最後は右サイドに大きく飛ばしパスが出た。サイドラインを駆け上がる明治の選手に天理のフルバックはラインに押し出すかタックルかを一瞬迷ったのかもしれないがそのまま飛び込まれた。あっさりと明治は同点に追いついた。
帝京に圧勝して決勝に勝ち上がってきた天理。
対抗戦では帝京に勝ち、昨年の雪辱をこの決勝戦ではらすべく意気上がる明治は、その相手は帝京ではなく今年の練習試合と招待試合で2連敗している天理だった。
そういう意味で両校の試合開始前のモチベーションはどうだっただろうか。
天理が早速得点しすぐに明治が返した。こんなに点の取り合いになるとは思わなかった。だが、それは開始直後だけだった。
その後の勝負を分けたのはラインアウトとブレイクダウンだった。
明治は相手のラインアウトからボールを奪うとトライ。ゴールも決まった。その後前半終了間際で天理はFW戦で攻め立てたが最後はグランディングが出来ずにホイッスル。
後半も明治は天理のミスをついてPGとトライを奪って22−5とした。ボクの後ろには天理を応援する小学生が数人いた。
島根選手のファンだろうか、彼らは島根選手の動きをよく見て声援を送っていた。70分までに1トライを返せばと少年は言った。そしてキックの応酬に明け暮れていた天理はもう自陣からのボールも攻撃的に回し始めた。ラインアウトは取られる、しかしスクラムやモールでは負けない。これが天理だ。繋いで繋いで前進する。いくつものフェーズを繰り返して少しでも前へと・・・・
そして少年たちが応援する島根選手が強引に突っ込んでトライ。とてもフッカーとは思えない華麗なステップだった。右サイドだったためゴールは決まらず22−10・・・
残りは10分だ。まだまだ、行ける。この少年たちはよくわかっている。時間コントロールも含めて・・・・
もう天理はマイボールならキープして前に出るだけだ。キックはしない。もうへばっていたかと思われたFW陣が息を吹き返す。帝京を5点に押さえこんだ天理だ。負けている以上、もうこわいものなどない。
中央を突く。この前のトライでコンバージョンを失った以上、サイドでトライを奪っても仕方がない。とにかく真ん中に決めて7点狙い。そしてそれが実現する。フィフィタがモールから抜け出してトライ。いよいよ22−17まできた天理。残り時間は5分弱。ボールさえ奪えば充分逆転の可能性はある。
明治のキックオフは大きく天理陣内に蹴り込んだが、そこから天理はボールを廻して押し込む。そして明治の22メートルラインまでゲインした。あと少しだ。
だが、ここで痛恨の天理のファウル。ボールは明治スクラムへ・・・・
残り時間は3分弱。これで天理は万事窮すかと思われた。だが、天理少年は言う。まだ明治陣内だ。一つ間違えば一気に逆転だと・・・
確かにそうだ。ボールを失ったとはいえ、相手陣内奥深いところでのプレーだ。なんと冷静な小学生なのか・・・・
明治がキープする。ボールを失わないのが明治の強みだ。だが明治はたまらず反則。天理ボールでのスクラムが組まれたのは残り30秒だった。ボールを失わない限り天理の攻撃は続けられる。スクラムを組んだ時点でホーンがなった。明治はボールさえ取れば蹴り出して終わり。だが、天理にキープされ続ける限り防御を続けるしかない。
明治のスクラムが崩れる。組み直しが行われてボールが出た。右に展開する天理。ショートバスに反応した選手はその後のゴールエリアが見えたのだろうか。そのままつっこめばトライが狙える、そして間違いなくコンバージョンも決まる位置。
だが、その選手はボールをこぼした。ノックオンの反則。これで試合は終わった。
天理は同志社以来2校目となる関東以外の優勝校という名誉を逃した。ラインアウトが半分しか取れなかったし、最後はノックオンというミスで試合が終わった。
負けた以上反省はあるだろう。ああすればよかったというのは当たり前だ。そういう意味では天理のああすればよかったというのはなにか・・・・
ラインアウトの弱さはもちろん否定できない。スクラムやモールでは明治より優位に運べた。ボクはなぜあのキッキングゲームに付き合ってしまったのかというのが心残りだ。
キックの応酬と言うのはかつてほど見られなくなった。ラグビーは陣取り合戦だが、その陣地を取るのはキックよりバックスから走り込んだ方が有効だと思えた。前半リードを奪われてから後半に追加点を失う間になぜ天理はそれをしなかったのだろうか。キックを選択すると言うことは相手にボールを渡すということだ。
もちろん選手の疲労度などを知らないボクはまったく無責任な意見だと思う。だが、明治だって明らかに疲労していたし、試合終盤はそれが十分に機能した。
挑戦者としてバックスから足で陣地を取りに行く。その積極性があったらもしかしたらこの試合はわからなかったと思う。
だが、試合が終わって式典が終わってもずっと明治を見つめていた天理の選手たちにはその悔しさを充分ため込んだはずだ。あの帝京に勝った。しかし明治には少しだけ届かなかった。死んでも忘れまい。
明治の優勝が22年ぶりとスタジアムに放送されて誰もがそんなに経つのかと思った。その明治に早稲田も慶應も今年は対抗戦では勝っている。もはや帝京に早慶明は紙一重だ。そこに関西王者の天理・・・・
かつて関東の強豪に同志社が君臨したように、大学ラグビーは来季も我々を楽しませてくれるだろう。
今年はラグビーW杯が日本で行われる。そんななかで大学や高校のラグビーが盛り上がらない方がおかしい。
昨年に引き続き大学の決勝は素晴らしい試合だった。だが、間違いなくトップリーグとはレベルとしては雲泥の差がある。さらに国際試合ではもっとだ。
いやいや、しかし考えてみれば20年以上前はサッカーでもそうだったではないか。これからだ。サッカーの日本リーグの観客がガラガラだったころの大学ラグビーの早明戦は国立競技場が満席となりそのチケットは関係者ですら手に入らないほどのプラチナチケットだった。大学ラグビー界ではそのような盛り上がりをまた見せてきた。
ボクの後ろに座っていた天理少年、彼らが天理青年になった時さらに強くなって天理はまたここに戻ってくるだろう。
天理青年、進め我ら・・・・
2019年1月12日 第55回全国大学ラグビーフットボール選手権 決勝(於 秩父の宮ラグビー場)
明治22−17天理
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