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2023年11月13日13:13

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11/12 秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開ー永青文庫の絵巻コレクションー@永青文庫

このチラシをもらった時夫に見せたら「これを元にした創作小説を澁澤龍彦が書いている、見たい!」と言い、『唐草物語』を貸してくれた。その中の「女体消滅」がそれだ。
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今年後半は、絵物語づいている。東博の「やまと絵」展の四大絵巻はじめ、「杉本博司 本歌取り東下り」では思いもかけず《法師物語絵巻》を全部見られたし、なんと言っても慶應大学の「へびをかぶったお姫さま」展の奈良絵本・絵巻が凄かった。

「やまと絵」展は入れ替え分、あと2回行く予定にしているが、その前にこちらで公開の模本もチェックしておきたい。

展示はすべて写真撮影不可だが、《長谷雄草紙》は全文の書き下しもついているし、場面説明も丁寧なキャプション付きで、かぶりつきで楽しめた。
4階3階の展示室が絵巻物で、2階が奈良絵本。模本は細川の殿様が右筆に作らせたなどで、《信貴山縁起絵巻》など有名な絵巻物のそれである。好きな人だけが熱心に齧り付いている展示室で、当方も時間をかけてたっぷり楽しめた。

https://www.eiseibunko.com/
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「長谷雄草紙(はせおぞうし)」(鎌倉〜南北朝時代、13〜14世紀)は平安時代の漢学者・紀長谷雄(きのはせお)にまつわる怪異な説話を題材にした絵巻です。江戸時代に徳川将軍家の宝物として秘蔵されていた一巻で、幕末維新期の混乱により長らく所在不明でしたが、昭和に入り、永青文庫の設立者・細川護立(もりたつ)(1883〜1970)の所蔵となりました。
この絵巻に描かれているのは、長谷雄と朱雀門の鬼との双六争い。見事勝利した長谷雄は美女を得ますが、鬼との約束を破って100日を待たずに美女に触れると、たちまち水となって流れ消えてしまうというストーリーです。双六の賽(さい)を振る音が線で表されるなど、今日のアニメや漫画に通じる表現も見受けられます。物語はわずか5段と短く、内容も明快で、室町時代以降の短編小説「お伽草子(おとぎぞうし)」の源流を示す貴重な作例とされています。

他にも永青文庫には、かつて熊本藩士の大矢野家に伝来した国宝「蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)の模本など様々な絵巻が伝わっています。本展では、これまであまり公開の機会がなかった絵巻コレクションを通して、横長の画面に繰り広げられる物語の世界をたっぷりとご紹介します。



【全巻公開 長谷雄草紙】

《長谷雄草紙 一巻》鎌倉〜南北朝時代
「柳営御物」(徳川将軍の御物)だったのが幕末に行方不明、昭和になって発見されたという。東博に模本がある。

「長谷雄のもとに、ある日妙な男が双六の勝負を申し込みに現れた。長谷雄は承諾し、男の後をついていく。」
聞き耳立てている人がいる?
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外出する時は牛車に乗っていくのが当たり前のなのに、なぜか男に連れられて庶民の町を歩く長谷雄。赤子をおんぶしたかみさんが魚屋に買い物に来たり、車屋の前で猿と子供が喧嘩したり、庶民の暮らしが生き生きと描かれている。
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「勝負の場所は朱雀門の楼上と男が指差す。長谷雄は勝負に全財産を賭け、男は絶世の美女を賭けると言った。双六は長谷雄が勝ち続けた。」
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サイを振る音が線で表されている。漫画表現のルーツがここにも。
劣勢となり興奮した男は、とうとう鬼の姿となり正体を現した。涼しい顔の長谷雄に対して、「ちょ、ちょっと待った!」と焦る鬼の顔がおかしい。
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「勝負に敗れた鬼は後日、美女を連れて長谷雄のもとを訪れ、百日間この女に触れてはならないと言い残し、女を置いて去って行った。」
女は後ろ姿で俯き、顔は見えないが、黒髪が美しい。長谷雄の住まいは、学者らしく棚に巻子がいっぱい。
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「長谷雄は最初は言いつけを守っていたものの、80日が過ぎる頃には我慢できなくなり、ついにその女に触れた。たちまち女の体は、水と化して流れ去ってしまった。」
素晴らしい庭のある屋敷、御簾の奥で共寝していたが…女の体が溶けていって縁側をつたって庭に流れてしまう。口をあんぐり開けて呆気に取られる長谷雄の顔。
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その女は、鬼が数々の人間の死体から良いところばかりを集めて作り上げたものであり、百日経てば本当の人間になるはずだったって。ゾンビにならず流れてよかったような気もしないでもない。

しばらくしてから、長谷雄の乗る牛車のもとに鬼が現れ、長谷雄の不誠実を責めて襲い掛かった。長谷雄が北野天神を一心に念じると、鬼は退散した。」
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北野天神に追い払われて逃げる鬼。
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鬼はちゃんと約束を守ったのに、長谷雄は守れず…女の誘惑には勝てぬか。こういうのって、あと20日我慢すれば!と思うところがみそ。翌日にすぐ触ったら話にならん。
それにしても、表情が豊かで生き生きとしている。


【熊本藩における中世絵巻の模本制作】

《蒙古襲来絵詞(模本)上下巻】文政4年(1821)
原本は三の丸尚蔵館蔵、2年前に藝大美術館で見たのは上巻だけだったかな。

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983013937&owner_id=2083345
熊本の御家人竹崎季長の活躍を描いているので、熊本藩が模本制作をする。色鮮やかでかえって見やすい。白描本もある。
上巻では、空中で鉄砲玉が炸裂
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下巻では、季長が敵の船に乗り込み、蒙古の首を刎ねる。兜代わりに頭につけていた脛当てが頭から落ちる瞬間も。

《後三年合戦絵巻 巻1、3(模本)》天保15年(1844)
源義家が空飛ぶ雁の列が乱れているのを眼光鋭く見つめる場面。近くに伏兵がいることを察知したのだ。義家の顔がいいのだ。

《十二類絵巻(模本) 上中下巻》江戸時代
これが実に面白かった。以前三井記念美術館や東博でみたものと同じ系統のものだと思うが、いずれも粉本、模本であるようなので、面白い絵巻物はこのようにたくさん語り継がれてきている証拠であろう。こちらは、堂本家本の模本らしい。

ストーリーは以下の通り
「十五夜の夜、十二支の動物たちが歌合をする。そこに鹿が現れて「我こそ鹿仙(歌仙)なり」と言ったので、動物たちは鹿をもてなす。鹿の従者だった狸はこれを羨み、次の回では審判をさせてくれというが、追い払われてしまう。
恨んだ狸は、十二支に属さない鳥獣を集めて仕返しをするが敗戦。今度は鬼に化けて戦うが再度敗退。
世を儚んだ狸は、法然上人のところへ行き出家。腹づづみを打って踊り念仏するが、和歌は諦めきれない様子。」

歌合の後の宴会で鹿をもてなす場面。
十二支の大将はどうやら龍らしい。唯一想像上の動物だからね。
それぞれの衣が面白い。鹿には紅葉の柄、蛇は鱗文、猿は柿の実模様、虎は笹模様(竹林)、牛は片輪車(牛車)、鼠はグレーの衣。犬が献上する?のは雉。
詠んだ和歌もそれぞれの姿にちなんでいるらしく、詞書も面白らしい。
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さらに面白かったのは、狸の得度以降の場面。神妙な面持ちで剃髪される狸の次の場面では、頭がカッパのようになった狸が腹づづみを打って踊り念仏をしているところ。

動物たちを擬人化した絵物語はやはり面白いね。


【お伽草子のストーリーを味わう】
「源氏物語」「伊勢物語」のような長編小説ではない、短編もののお伽草子は室町から江戸時代に流行り、400以上あるという。

《いはや物語(岩屋物語)上中下巻》江戸時代
いわゆる継子譚だが、面白いのはこのシーン。継母に捨てられた姫を救い育てるのは、文では「海女(あま)」になっているが、絵では「尼(あま)」になっているところ。絵師のテキスト誤読らしい。
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 《申陽洞記絵巻 下巻》江戸時代
これは中国の話。猿の妖怪退治をして、3人娘を救出して、長者になる。3姉妹ともに嫁にしてしまうのがすごい。医者と嘘をついて猿の屋敷に忍び込み、薬と称して毒を飲ませて退治。画像は猿たちがぐでんぐでんになっているところ。
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《秋夜長物語絵巻 上下巻》室町時代
僧侶と稚児との男色物。メトロポリタン美術館にもある。
僧侶が寝ていると美しい稚児が夢に現れる。ちらっ
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二人の契りが比叡山と三井寺の争いに発展。矢の数がすごい!すざまじい戦いだ。
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【熊本藩の藩校「時習館」所蔵の絵巻】

《北野天神縁起絵巻 巻4、5》室町〜江戸時代
ご存知菅原道真が怨霊となって清涼殿に雷を落とすシーン。怨霊というより雷神そのもの。


【お祭りを描く】

《祇園祭礼図巻 下巻》江戸時代
軸端に葵の御紋。金銀泥、極彩色の豪華絵巻。婚礼道具の一つと見られる。


【奈良絵本の世界】

《絵入太平記 巻1、7、9、30、51、80》江戸時代
奈良絵本化した太平記で現存する唯一のもの。全文収録で83冊にのぼり、最大冊数の奈良絵本だという。しかも大変豪華!
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《絵入平家物語 巻1中、5下、9上、11中》江戸時代
こちらは36冊。画像にはないが、11中巻の「壇ノ浦の合戦」図は細かくてびっくり。
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画像があまり見つからなくて残念。百聞は一見にしかず、東博の「やまと絵」展に行った人も行かない人も見る価値ありです。

12月3日まで



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