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2020年09月15日14:47

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神様もう少しだけ 15

そのオフィスは電車とバスを乗り継いで1時間半ほどの所にあった。
辺りを墓地に囲まれているという異界な場所であった。
古いお屋敷を改装したオフィスには簡単に中に入れた。
昼間なのに薄暗く、決して気持ちいい空間ではなかった。
奥に進むと中年の男性がつぐみと共に座っていた。
「ようこそ、我が研究所に」
「あなたはいったい何者なの?」
「わたし?わたしはヒューマノイドの研究者だ。と言っても私欲の為だがね」
つぐみの様子は生気がなくただの人形の様であった。
「つぐみ……」
「ふ、ふ、ふ、実に面白い、このゲームは最高の終わり方をしたのである」
人形の様なつぐみにがっかりした様子のわたしに男性は笑みを浮かべて上機嫌である。
「ゲーム?」
「そう、ゲームだ、孤独な少女にヒューマノイドを貸し出して友情の解析をしてわたしが幸福感を得るゲームだ」
「では、本物のつぐみが居るの?」
「あぁ、居る、ただのひきこもりの少女だ」
やはり、わたしの想像は合っていた。
こいつからつぐみの居場所を聞き出さねば。
中年の男性はVRのゴーグルを身に着けて、机の上のパソコンをカタカタしている。
「今から、お前達の友情をこの装置で再現して最高のゲームを味わうとしよう」
「博士、98%以上の友情は危険です。脳内で何が起こるかわかりません」
「うるさい、親友を求めてこの場所まで来た友情だ、気持ち良いはずに違いない」
男性はヒューマノイドを叱り付けてエンターキーを押す。
「おおおおお、記憶が吹き飛びそうな気分だ!」
絶頂を味わっている男性の様子が急変する。
「あが、あが、が、が、が……」
「やれやれ、理解できませんね、博士はもうダメです」
ヒューマノイドはさばさばした口調で話始める。
「ギ、ギ、ギ?」
VRゴーグルがずり落ちて子供の様な表情の男性は……。
「きっと、博士はゲームの世界に旅立ったのでしょう」
ヒューマノイドはそう言うと立ち上がり、わたしにメモを渡す。
「つぐみさんの住所です。使うか使わないかはあなたが決めて下さい」
本当のつぐみ……わたしは改めて気が引き締まった。

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