女の人にはかなわないや

　先週の始め、ブックオフオンラインからお気に入り登録の書籍が入荷、という通知メールが届き、タイトルを確認するや否やポチった。登録してから2年くらい経っていたのではないか。
　著者は映画配給会社を自ら起ち上げたフェミニストで、雑誌クロワッサンの編集をしていた時に知り合った。当時は某映画配給会社の社員で、その後しばらくして彼女は会社を辞め、女性やゲイ、発展途上国といった弱い立場が主役の映画を配給したいという強い意志に駆られてゼロから起業した。1987年頃だったと思う。
　仕事関係というよりもう少し深い付き合いがあった。が、21世紀あたりを境に付き合いは途絶えた。その頃から映画の配給本数が加速度的に増え、私も名ばかりの中間管理職に就いて忙しくなり、自然消滅したカタチだ。
　彼女をフェミニストというわかりよいラベリングをしてしまったが、天性の映画人で、芸術全般に対しても理解があり、一筋繩で言い表せない魅力があった。たぶん彼女とは政治的な話をしたことがない。というのも、色分けすればサヨクであるが、もっとラディカルなところで社会の歪みを捉えて、自分に何ができるかということに専心していたから、茶飮み話のような政権批判を口にしなかった。
　2年ほど前、その彼女の半生記を綴った本が出版されているのを知って、とりあえずブックオフオンラインに登録した。ほぼそのことを忘れていたのだが、通知が届いた時は懐かしさが多幸感に変わるような嬉しさを覚えた。旧友とばったり、銀座の街で遇って、笑顔で立ち話が出来たような。
　ブックオフでまず本を受け取り、せっかく来たのだからと店内を逍遥するようにあっちこっち移動しては、気になった本を棚から抜き出した。
　15分くらい経った時点で、かつて担当した作家のエッセイ集を見つけた。売れっ子作家なのに名前を聞いたことがない小出版社から刊行されている（小石川書館）。彼女も自分とは次元が違う天賦の才人で、知り合って以降、尊敬し続けている。5冊に1冊の割で本を読んでいる。
＜創作の秘密、辺境グルメ、クラシック、生物進化学……多彩なテーマで皆様を知の旅に誘い出す＞
　売価を見ないで買いだ。
　ブックオフにクルマを置いたまま、徒歩8分のスーパーへ行って、ランチ用の安いお弁当、パン、2日分程度の食料を買って駐車場まで戻り、クルマを運転して帰宅。
　弁当を食べてすぐ、まずは注文して手に入れた「半生記」を読み始めた。起業するきっかけを与えてくれたゲイのドキュメンタリー映画に触れたあと、小学校時代の映画体験や高校・大学（早稲田だと初めて知った）生活……。ほぼ私の知らないことだらけで、こんなに知的な女性だったのか、と驚いた。私より5歳年上なので、そもそも出会った時点で人生経験はそれだけ豊富ではあったのだが、できる女性というのは男性より優秀だ。このことは小学生時代からずっと感じていた。

　寝室を少し模様替えし、自身のパソコン環境を改良して以降、多幸感を覚えるようになった。座り心地のいい椅子が2つあって、どちらかに座って本や雑誌を読んでるか、YouTubeで音楽動画を見聞きしていると、ひどくラグジュアリーな時間だと思う。
　一昨日からサブのiMacでも使い始めたApple純正のマジックマウスは、よく使う機能を簡単なジェスチャーだけで操作ができ、改良というより革命的な操作感になった。これが面白くて、マウスを掌で包み込んでいるだけで気分がいい。デザインもいいんだよなあ。
　朝起きると、必ず掃除をする習慣があるのだが、部屋に気を配るようになってから掃除が念入りになった。げんきんなものだ、と思う。
　年内もあと2カ月ちょっと。さらに部屋を整理整頓し、本を処分したい。