原題は「Den of Thieves(盗賊の巣)」です。主役がミスター・アツクルシイのジェラルド・バトラーで、邦題が「ザ・アウトロー」ですから、パスしようかと思ってました。でもimdbの点数が７点あり、正常分布曲線の“高評価部分のカーブ”がなだらかに高評価なので、とりあえず30分は見ようと決めました。そしたら大当たりです。久々に手ごたえ十分のクライム・アクションを楽しんだ気がします。
物語は、空の現金輸送車が盗まれるところから始まりますが、盗賊側の重装備に驚きました。防弾ガラスを突き破る装備を始め、火器類も重々しい。そして軍隊並みのてきぱきとした行動が心地よい。この“つかみ”で最後まで見てやってもいいかなと思いました。クリスチャン・グーデガストって、初耳ですがな。俳優エリック・ブレーデンの息子？ 彼の「地球爆破作戦」が公開された年に生まれてるんですね。
父親が俳優ですから、子供のころからウエストウッドの映画館に入り浸りだったとか。ＵＣＬＡで映画を学んで、卒業製作の映画がオリヴァー・ストーンの目に止まって買い上げられたそうです。知らん知らん、ハリウッド３バカ監督の一人の行動なんか気にするかい。以後、脚本の手直し役を経て脚本家としてデビューしたらしい。これが第１回監督作で、はやくもこの映画の続編に取り掛かったようです。
で、空の現金輸送車が盗まれた事件ですが、大がかりな銀行強盗の準備と見てシェリフのニック・オブライエン(ジェラルド・バトラー)率いる重犯罪チームが担当します。この暑苦しいオッサンが、現場で殺された輸送係が食べ残した(買って出てきたところ射殺された)ミスター・ドーナツを、現場保護の原則など知るもんかと食べてしまう。これが僕にはツボでした。
お約束のＦＢＩとの捜査主権争奪戦は置いといて、簡単に首謀者らしき男メリメン(パブロ・シュライバー)が浮かび、運転手として雇われたらしきバーテンのドニー(オシェア・ジャクソン・Ｊｒ)も浮かびます。というか、つかみの襲撃のすぐあとから、ギャング一味中心に話が展開するので、捜査チームが知らんかったら観客からはシェリフがアホに見える(ハナから僕は嫌っとる)。そのあたりを知っての作劇だと思いました。
どうやら現金輸送車は、次の大掛かりな仕事の準備らしいと分かり、回想シーンをまじえて一味の関係を洗い出します。この無駄のなさがいいですね。そこまで分かったら捕まえんかいと思うけど、観客が神の位置で知る情報をミスター・アツクルシイが簡単に手に入れたら、それこそ「ホワイトハウス・ダウン」程度で終わってしまいます。暑苦しい男が仕事の熱心なあまり、妻から愛想尽かされて２人の娘ともども家を出ていかれるなど、なくてもいい寄り道ですが娘がかわいいから僕は許す。
で１時間くらいから、本当の大仕事が動き始めます。ちょっと早すぎないか？と思いますが、狙った銀行ではない銀行を襲撃するわけです。それが陽動作戦だとアツクルシイさんが泳がせていたら、お約束どおりＦＢＩが包囲してしまう。そしてたっぷり時間をかけて本命の犯罪に取りかかるわけです。
ということで２時間、十分に楽しみました。後の20分のドタバタはどうでもええ(10分はエンド・クレジットだし)。ここまで犯罪を楽しませてくれた映画は、近年まれとちゃいますか？ これは僕が犯罪映画を敬遠しているからだけではないと思います。昨年サンタモニカで見ることもできたと思いますが、この映画は字幕入りで見ないと筋が追えない。今回スターチャンネルが初見でよかった。←冒頭、外れたはずのフロントガラス、ちゃんと外れているか確認するため巻き戻してしまいましたよ(笑)。
オシェア・ジャクソン・Ｊｒってアイス・キューブの息子だそうで、「イングリッド ネットストーカーの女」(2017)の大家さんですね。今回は車の運転が得意だということで犯罪チームに入る男でした。善良そうなのにね。パブロ・シュライバーって、リーブ・シュライバーの弟でしたか。この映画ではデカイ面してますが、出演作の数から言えばその権利はあるな。僕は知らんけど。
ということで、十分楽しめる犯罪映画でした。もっとも犯罪を楽しんではいかんという道徳面が気になる方は、「ジョーカー」ともども無視してください。このあたりの作品を無視して映画を“楽しむ”ことができる人は、マスゴミの喧伝する映画だけで十分でしょうから。と、酒の味を知らずに半世紀以上生きてきたジジイは、与太を並べるのでした。
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