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2019年10月07日03:18

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ヒット映画の“二匹目のどじょう”を狙う気持ちは分かるけど、もっと物語を煮詰めてほしい。井上芳夫監督「女殺し屋 牝犬」(1969)。

僕は作り手の事情を考える前に、映画そのものの出来というものを考えるという見方をします。ですから「女賭博師」シリーズが人気を博している時期に(少し陰っていたかも)、市川雷蔵の「ある殺し屋」が受けたから、江波杏子主演で作れば“売れる”という会社的発想は全く興味ありません。とはいえ、あのころシャープな美貌にぞっこんだった江波杏子さんのお姿に拝見したい、ということで見ました。

まずタイトルバックで、指輪に仕込んだ針で、すれ違いざまに男を一撃して殺す姿が描かれます。なんか派手な振り付けが恥ずかしいけど、つかみとしてはOKでした。そして、小料理屋の女将(江波杏子)が、超一流の殺し屋だということになり、日本の政界財界を揺るがすスキャンダルの主を殺そうとする話です。「ある殺し屋」+「女賭博師」+「黒い○○」シリーズですわ。

「ある殺し屋」って、市川雷蔵が黙って畳針で殺人を行うという部分が受けていたわけですが、この江波杏子は自分が殺されかけたことからクライアントに反撃を始めます。そういう物語でOKを出してたら、そもそもシリーズ化は無理でっせ。せっかく政界を揺るがす大スキャンダルの主を、豪華ホテルのプールで殺すという見せ場があるのに(つまり江波杏子の水着姿が見られる)、話がどんどん矮小化されていくわけです。

女将の店に常連客として来ているモデル嬢(赤座美代子)が、クライアントの会社社長の彼女という“偶然”の設定も、あんまりすぎてバカバカしい。そもそも、せっかくの若手起用にもかかわらず色気場面がイマイチ(いやイマサン)でした。愛欲シーンなんかなくても、ちゃんとアイ・キャンデーとして楽しませてくれなくちゃ。←70歳越えのジジイだから、安易なものでもいいのですぜ。それがこの不満だから、出来ばえが分かるでしょ。

「女賭博師」シリーズは、普通の女性が手本引きをプロに仕込まれ、普通の女と賭博師の女という二律背反に揺れるというコンセプトでした。その揺れ具合が、端正な江波杏子の容姿とうまくマッチしていたことがポイントだった思います。今回は、単に命を狙われたことへのケジメというだけでなく、犯罪に対する正義感みたいなものが表面に出てきて面白くない。“わたしが拳銃を発射するときは絶対外さない”というセリフがあるのですが、それを画面で観客に説得させるシーンがない。つまり“見せ場”がない殺し屋映画なのでした。

そうは言うものの、あのころの江波杏子さんのシャープな容姿には惹かれます。また別の映画が放送されたら録画してしまうだろうな。井上芳夫監督はごひいきだったけど、1本くらいはこんな出来の映画を作るでしょう。とりあえず契約中の有料BSで見る分には、我慢できます。
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