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2019年10月02日09:09

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“生殺与奪”は娯楽要素には向かない。ウィルソン・コニービアー監督「判事オリヴァー・ストレート〜全米に裁かれた男〜」(2019)。

知らない監督の未公開作品で、imdbのポイントは5.9と低い作品です。僕は通常、6.5以下の作品はパスしますが、今回はドナルド・サザーランドが主演しているということで見ました。原題が“American Hangman”ということで、サザーランドが“首吊り判事”かと考えたしだい。でも内容は違いました。

物語は、2人の男が拘束されて地下室に連れ込まれるところから始まります。一人は判事(ドナルド・サザーランド)で、もう一人は判事に対して、犯人がどこまで本気かを示すために連れてこられただけ。判事はかつて、少女誘拐殺人事件の裁判を担当し、被告に死刑判決を下しました。その死刑が今朝方執行されたという設定です。今回の犯人は、インターネットで判事を被告席に立たせ、SNSで有罪か無罪かを問う、という展開です。

いわゆるタイムリミット・サスペンスという雰囲気で、SNSで見た連中が警察などに連絡し当局も捜査を始めます。そういうサスペンス部分はまずまずなのですが、犯人側の用意周到さや、なぜ判事が裁かれるのかという肝心の部分が希薄でした。ま、サザーランドを登場させただけで、“このおっさん、有罪や”と思いますけどね。←こういう軽薄な反応が問題になっているときに、多数決で物語を進める部分に作り手側の“安易さ”を感じてしまいました。

もちろんケーブルテレビかネット放送のための“娯楽作品”に、マジに突っ込んでも意味がないという考え方もあるでしょう。そこはそれ、永遠の13歳である僕は、大人の考え方にはなりきれないのですよ。なによりも、この作品にはアイ・キャンデーが乏しい。それが最大の弱点です。

映画なんだから“命がけのハラハラ冒険”にサスペンスを求めてもいいと思います。でも、今回の犯罪に対しては、いかなる正義もなければ、そもそも正義を正面から問う姿勢すらない。少しでも、裁判というものが“特殊な環境下の事態を正常な社会感覚で裁く”ものだという矛盾した事実を浮き彫りにするならまだしも、SNSで繋がった人間の多数決で結論を得るというアホな結末は、とても甘受できませんでした。

ま、こんな映画を作るやつもおるということで。
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