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2015年12月24日20:16

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「まろにゑ」5号〜8号より

知らぬ間に背の丸まりて歩きゐるガラス戸ごとにわが身の映る   池田祥子

閉ざされし穴の暮らしの妖しさは忘れ難しも『砂の女』よ

モナリザの微笑みわたしを拒みたり組まれしもろ手も開かれぬまま

犇めける卵かと見る柘榴の実あるかなきかに透きとおる赤


さわさわとつるは延びゆく朝顔の朝なあさなやオルガンソナタ   桜木由香

征きゆきて斃れし日本軍兵士 昭和の胎からわれは生れき

死せる子の自転車は白き川べりにうち捨てられて月光のなか

もうすこし待ってみます 散る雪に手袋あかく少女佇む


尖らせた芯の鉛を舐めながら薔薇という字を書いたとしても   鈴木美紀子

いつまでも目覚めぬひとの傍らで百合の香りは行き場を失くす

除光液染み込ませているコットンで爪の尖りを黙らせてみる

遠心力のせいかも知れず 広がったフレアースカート 燃えやすい裾


みどりごを危うく腕に抱きとりて耳に寄せ聞く息のさやぎを   服部えい子

沙羅の木に蓑虫あまた浮遊するボストンより帰りきたれば

からころと乾ける音が身の裡を鳴らしていくよ明日は立秋

炉心溶けいまなお空を覆うらし常磐道は四シーベルト


暗闇に腹這ひて寝る兵士らの背を照らしつつ月渡りゆく   福田淑子

何処ニカ反物質ノ星アリテ出会ハバ地球ノ消滅幻想

適度なる距離保ちつつ水鳥のつがひの泳ぐ木漏れ日の池

お隣のマゼラン星雲から見れば銀河の果ては何色だらう


[付記]「まろにゑ」5号(2015.9)〜8号(2015.12)より、5人の作者の作品1首ずつを引きました。


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