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日記一覧
- 大村先生のこと
- 2015年10月08日15:41
大村英昭という名前はもちろん、社会学という学問があることも、大学に入るまで知らなかった。 私は人間科学部というところに入るために、大阪大学という学校を受験することを選んだ人間で、おまけに倫社主席で高校を出た人間だが、それでも、そんなものだ
- 『本の窓から』目次（３）
- 2015年08月12日10:02
■第五部パズルストーリイをスタイリッシュに書く 都筑道夫『七十五羽の鳥』スリラーとパズラーが渾然一体に マイケル・ギルバート『捕虜収容所の死』初々しいとはかくも不思議に魅力的 鮎川哲也『ペトロフ事件』時代を超えて前衛的な名作 アルフレッド・ベス
- 『本の窓から』目次（２）
- 2015年08月12日09:48
■第三部まだバリンジャーを読んでいない貴方へ ビル・Ｓ・バリンジャー『赤毛の男の妻』『歯と爪』限界状況での憎悪と差別感情 Ｊ・Ｍ・スコット『人魚とビスケット』サスペンス溢れる知られざる傑作 ヒュー・ペンティコースト『狂気の影』ハウダニットを支
- 『本の窓から』目次（１）
- 2015年08月12日09:36
■第一部あったはずのサスペンス アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』角川文庫版『獄門島』への疑問 横溝正史『獄門島』逆説的な非現実感の背後にあるもの Ｇ・Ｋ・チェスタトン『ブラウン神父の童心』帝国主義大盛り上がりのただなかで モーリス・ルブラン
- 扇田さんのこと
- 2015年05月26日12:15
亡くなった扇田昭彦さんと私とは、おそらくひとつきりしか接点がない。ただ、そのことについては、書いておきたい。 いまも多分続いているのだろうが、朝日新聞は年末回顧の欄を演劇でも持っていて、扇田さんが現役のころは、その欄を毎年執筆していた。識
- 正史にオマージュ 最終回
- 2015年05月20日21:52
終章 事件が解決したあとで（承前）「等松と美松がヘンテコな呪文を唱えてただろう。効能とか祈願成就だとか言って。あれは呪文でも何でもないんだ。Como poco coco como poco coco compro．早口言葉なんだよ、スペイン語の。ふたりとも巧く言えてなか
- 正史にオマージュ 第１０６回
- 2015年05月20日12:28
終章 事件が解決したあとで（承前） 私たちは母屋に集められ、そこで一夜を過ごした。おもに、私と弟子待とディオスが、村の近況について、訊問を受けた。ディオスは私の通訳兼アドヴァイザーとなった。小郡の家にあったキリストばあさんのバスケットを調べ
- 正史にオマージュ 第１０５回
- 2015年05月19日23:40
終章 事件が解決したあとで（承前） ロドリゲス中尉の目が剃刀のように細くなっている。髭の口許がわずかに吊りあがった。「あなたは何者だ。この村の住人ではなさそうだ」 ディオスは身分証明書を提示した。「ＮＧＯか？」「そうだ」「この国に難民はいな
- 正史にオマージュ 第１０４回
- 2015年05月19日13:37
終章 事件が解決したあとで（承前） 事態の推移についていけない。松男叔父の本名がドミンゴ。池添の名前がアキラ。ホルヘ・ガルシアというのは、溺死したワニブチのことなのだろうか。迷彩服の男の質問に、誰が答えるべきなのか分からず、祖父に目をやると
- 正史にオマージュ 第１０３回
- 2015年05月19日07:21
終章 事件が解決したあとで ディオスからハンカチを渡された。 そのとき、なにか叫び声が聞こえ、すぐに、どたどたという幾人もの足音が廊下に響いた。スペイン語の叫び声がする。私はあわてて涙をぬぐった。 背後の襖がガサっという音を立てて、乱暴に開
- 正史にオマージュ 第１０２回
- 2015年05月19日01:42
１４ 責めを負うべき者（承前） ディオスの黒い瞳が伏せた目の中で小さくなった。彼は呟くような声で続けた。「私は騙されませんよ。雙松（ふたまつ）は確かに、自分の身体ごとぶつからないと、ワニブチを殺せなかったでしょう。美松（みまつ）は、自分が毒
- 正史にオマージュ 第１０１回
- 2015年05月18日19:35
１４ 責めを負うべき者（承前） ディオスは喉の奥になにかがからみついたような咳をして、喋るのを中断した。祖父は「初音、水ば持ってこんね」と言ったが、ディオスは、いらないと言って、照れたような笑みを浮かべた。「続けます。三番目の殺人は、國松さ
- 正史にオマージュ 第１００回
- 2015年05月18日14:03
１４ 責めを負うべき者（承前）「第二の殺人では、ふたりの犠牲者以外の人間は、犯行現場にいませんでした。だから、一升瓶は置き去りにされ、電気も点けっぱなしでした。ならば、第一の殺人でも、ふたりの犠牲者以外の人間は、犯行現場にいなかった。だから
- 正史にオマージュ 第９９回
- 2015年05月18日10:32
１４ 責めを負うべき者（承前） ディオスはそこで間を取った。答えを求めている顔つきだ。私は思いついたことを言ってみた。「犯人は、とっくりが捕捉可能なほどきちんと管理されていることを、知っている人間」 ディオスは微笑んだ。「確かに。しかし、も
- 正史にオマージュ 第９８回
- 2015年05月18日07:08
１４ 責めを負うべき者（承前） 疑問がひとつ私の口をついて出た。「ワニブチがその時間に落ちたのは分かるけれど、雙松（ふたまつ）は、もっとずっと前やずっと後に殺されたのかもしれないじゃない」「いいえ、早い時間はありえません。彦島の奥さんが葬列
- 正史にオマージュ 第９７回
- 2015年05月18日01:41
１４ 責めを負うべき者（承前）「小郡（おごおり）イサクの失踪は、直接には、連続殺人との関連があるとは思えません。ただ、まったくの無関係とも私は考えていません。「では、三対の死のうち、最初の事件について考えてみましょう。ふたりの人間が溺死しま
- 正史にオマージュ 第９６回
- 2015年05月17日23:28
１４ 責めを負うべき者（承前） 私はびっくりした。祖父の顔に目をやると、やはり驚いているのか、唇の端が震えている。「最初の殺人は、通称キリストばあさんが射殺された事件です。これに先立って、小郡（おごおり）イサクという人が、失踪していますが、
- 正史にオマージュ 第９５回
- 2015年05月17日20:58
13 雨がやむ（承前） 「私を、あなたのおじい様、歳松さんですか、その方のところへ連れて行ってもらえませんか」「祖父のところ？」「ええ。お葬式だということは理解できます。でも、これは急ぐことなのです。そして、重大な問題なのです」 ディオスの態度
- 正史にオマージュ 第９４回
- 2015年05月16日12:07
１３ 雨がやむ（承前） それでも、ディオスは、読み終えるのに、夕方までかかった。集中した方がいいだろうからと、離れの私の部屋をあけわたして、由美子さんや他の人たちには、ディオスのことは知らせずにおいた。母屋に戻ると、由美子さんは広間にいて、
- 正史にオマージュ 第９３回
- 2015年05月14日13:51
１３ 雨がやむ（承前） 四駆は、道幅ぎりぎりの土橋を渡り、道幅ぎりぎりの坂道を登った。「雨が降り続いてたんですって？」 運転しながら、快活に話しかけてきた。「セバスティアンが、電子メールが来なくなったといって、心配していました。幸い、私が近
- 正史にオマージュ 第９２回
- 2015年05月11日20:59
13 雨がやむ 通夜の席はいたたまれなかった。由美子さんは放心したきり正座を崩さず、微動だにしない。しかも、誰が話しかけても反応しなかった。沈黙のうちに、重苦しさだけがつのった。弟子待（でしまつ）は私のノートを持って、さっさと家に帰ってしまっ
- 正史にオマージュ 読者への挑戦
- 2015年05月09日15:19
というわけで、第１２章まで、おつきあいくださって、ありがとう。ここで、すべての手がかりは提示されたので、読者諸賢におかれては、犯人を名指し、一連の犯行の真相を言い当てることが可能なはずだ。連載途中でお名前を出した方、出さなかった方、どなた
- 正史にオマージュ 第９１回
- 2015年05月09日15:04
１２ 三組目の殺人（承前） 弟子待（でしまつ）は、お手上げとばかりに、椅子の背に身体を投げ出した。私は立ち上がると、窓を開け、閉めてあった雨戸を開いた。闇の中を雨は降り続いていた。ただ、風が弱まっているようで、降りこまない。「雨、降り続いて
- 正史にオマージュ 第９０回
- 2015年05月08日06:33
１２ 三組目の殺人（承前）「大叔父と等松（ひとまつ）の死体はどうなってるの？」「広間に置いてあるよ。縄もそのままで。結び目を解いてないから、はっきりは分からないけれど、ふたりとも、あの縄で絞められたみたいだな」「どういうこと、それ」「だから
- 正史にオマージュ 第８９回
- 2015年05月07日14:23
１２ 三組目の殺人（承前）「いま、思い出してみてるの。……あのねえ、私が隠居所から戻るとすぐ玄関のところで大叔父に会って、納屋で松男叔父がって話になった。大叔父は急いで確かめに行くって様子だった。そうよ。だから、たぶん、大叔父は松男さん云々
- 正史にオマージュ 第８８回
- 2015年05月06日16:56
１２ 三組目の殺人（承前）「初音さんが、記録をとっている間に、ぼくも今日の事件を調べてみたんだ。ただ、分からないことがあって、昼食後にぼくが松浦��（まつらごう）を出てから、初音さんがぼくの店に来るまでのことは、誰も知らないんだ。たぶん、初音
- 正史にオマージュ 第８７回
- 2015年05月05日07:21
１２ 三組目の殺人（承前） 母屋には顔だけ出して、隠居所に伝えたことを報告し、白い家の私の部屋にこもって、ノートの続きを一心不乱に書きつけた。この記録だけが、私の気力と正気を支えてくれているのだと、自分に言い聞かせながら書いた。通夜と葬式の
- 正史にオマージュ 第８６回
- 2015年05月03日16:25
１２ 三組目の殺人（承前） しばらくして、彦島と峰の渡邊さんが台所へやって来た。「初音お嬢さん」 彦島の口調はかしこまっていた。「お願いのあるとです」 見るからに言いにくそうだった。俯いて、一、二度口ごもり、私の麻痺した頭の芯でさえ、じれっ
- 正史にオマージュ 第８５回
- 2015年05月02日21:19
１２ 三組目の殺人（承前） それは、私と弟子待（でしまつ）が帰り着くまでは、お情けで待っていてくれたかのようだった。母屋の引き戸を閉めると同時に、バケツだか水瓶だかをひっくり返したみたいに、雨足が激しくなった。母屋の三人――私、弟子待、自室
- 正史にオマージュ 第８４回
- 2015年05月01日21:45
１２ 三組目の殺人（承前） 弟子待（でしまつ）は、自分の店のカウンターで、いかにも苦そうな顔をして、エスプレッソを飲んでいた。ボニータは小郡（おごおり）の家に行っていた。私が大叔父の話をすると、飛び上がった。すぐに、ふたりで神社へ向かう。弟
