とうとうこの日が来てしまった。
5月に発売日にチケットを取って以来このリサイタルが待ち遠しかった。
4月の二期会オペラ『ルル』で彼女の歌を初めて聴き、すっかり魅了されてしまったのだが、そういう人が少なくないようだ。
今日のリサイタルも完売。
宮地江奈:ソプラノ
三原有紀:ピアノ
01.シューマン:献呈 Op.25-1
02.R.シュトラウス:献呈、万霊節 (8つの歌 Op.10 より)
03.R.シュトラウス:アモール Op.68-5
04.シューマン:トロイメライ (Pf solo)
05.シューマン:女の愛と生涯 Op.42
<休憩>
06.ヘンデル:私を喜ばせにきて (『アルチーナ』より)
07.モーツァルト:おいで、かわいいひとよ (『ドン・ジョヴァンニ』より)
08.モーツァルト:あらゆる責め苦が待ち受けようとも (『後宮からの逃走』より)
09.ショパン:ノクターン 第2番 変ホ長調 Op.9-2 (Pf solo)
10.モーツァルト:楽しい思い出はどこへ (『フィガロの結婚』より)
11.ヴェルディ:そは彼の人か 〜 花から花へ (『椿姫』より)
<アンコール>
12.木下牧子:竹とんぼに
7月のサロンでの「おたのしみ会」と同じデュオ。
期待していたリサイタル。ホールで彼女のリサイタルを聴くのは初めてだ。
過剰なほど期待していたのだが(不安は感じていなかった)、そんなものはあっさりと超えてくる。声質、声量、技巧、表現、表情、演技、全てに於いてハイレベル。
彼女の声は決して柔らかくはない。むしろ硬質とも言えるだろう。そこに凛とした強い意思を感じる。
シューマンの『献呈』はリスト編曲のピアノ独奏で聴くことが多かった。
こうやって改めて歌曲として聴いてみると、よくできた曲だと思う。彼女の第一声を聴いて鳥肌が立った。
シュトラウスの『献呈』を並べ、よく知られる『万霊節』はシリアス路線。
対して『アモール』はコミカル。
『女の愛と生涯』は今の時代では共感を得ることが難しいかもしれない。男性から見た理想の女性像というふうに捉えられてしまうからだ。確かに理解はできるが、それが普通だった時代がある。時代を考えずに否定するのはどうかとも思う。ただ共感できなければ演奏することは難しかろう。ただそこに描かれているのは、そういうものを抜きにしても成立しうる喜びや哀しみといった感情だと思うのだ。なので敢えてこの作品を取り上げた彼女に敬意を表する。
最終曲、最愛の夫との別れを、彼女は悲しみの上澄みを救い上げたような純度の高い歌唱を聴かせる。
以前聴いたシュトラウスの『四つの最後の歌』でも感じたような、悲しみの先にある悟りにも似た世界とでも言えばいいのだろうか。なんにせよ彼女はこうした曲の歌唱に長けている。まるで心が洗われるようなのだ。
後半はアリア集。
まずはヘンデルでは客席後方から登場。終盤ではピアノ(連弾)を披露。ミスがあるのはご愛敬。それさえもが楽しい。装飾入れまくりの技巧的な歌もまた味がある。
モーツァルトももちろん悪いわけがない。まるで舞台が見えるかのような演技が素晴らしい。仕種、振舞い、表情、全て含めて歌なのだ。
ヴィオレッタになり切った『椿姫』も圧巻。特に前半の『そは彼の人か』が絶品。彼女が主役の『椿姫』を見てみたいものだ。
アンコールは「おたのしみ会」でも歌っていた日本の曲。
彼女の発声は言葉が明瞭に聴き取れる。
三原有紀のピアノ・ソロが2曲。
前半のトロイメライは江奈嬢のリクエストにより急遽追加されたのだそうだ。なのでプログラムには記載されていない。
ボディのしっかりした暖かい音で、構築的な音作りをしていた。トロイメライはゆったりしたテンポで、意外に低音が鳴っている。
ショパンのノクターンは全く甘くなく硬派な印象で好ましい。
彼女のようなカッチリしたピアノだと歌手は歌いやすいのかもしれない。
先述の通り、期待しまくっていたのにその期待をあっさり超えてきたリサイタルだった。
凄い歌手だよ。
サイン会は長蛇の列。(ソロCDを出しているわけでもないのに)
明るいキャラが素敵だ。笑顔が可愛らしい。
ちなみに前半は赤地に大柄な白い花をデフォルメした目が覚めるようなドレス。
後半はグレー(シルバー?)とおとなしめのピンクが基調のデコラティブなドレス。
どちらも良く似合う。
サイン会では前半のドレスに着替えていた。
楽しみにしていたリサイタルが終わってしまって、これから何を楽しみすればいいのだろう。
なんて言っている場合ではない。今年はまだまだ彼女の歌を聴く機会があるのだ。
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