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2026年09月22日07:33

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大竹文雄『経済学的思考を組み立てる』(中公選書)を読みました

大竹文雄『経済学的思考を組み立てる』(中公選書)を読みました。
著者は、大阪大学特任教授であり、ご専門は労働経済学、行動経済学だそうです。
本書は、毎日新聞の書評欄を中心に著者が様々な媒体で最近10年余りの間に取り上げてきた書評を取りまとめています。
序章と終章を別にすれば8章構成であり、ざっくりいって、意思決定、格差・不平等、教育、労働、EBPM、市場・制度・イノベーション、マクロ経済、幸福、となります。やや、ベッカー教授のような経済学帝国主義の趣きがないでもなく、すべてを経済学で解決することができるような内容になっているのは、まあ、致し方ないように私は受け止めました。私のような未熟者と違って、さすがに熟達のエコノミストですので、書評とはいえ一流の解説がなされています。これらの書評に目を通すだけで、読まずに内容を把握できそうな気がします。
ただ、1点だけ気になるのは、最近流行のEBPMなのですが、私は一般均衡的に考えられているのか、あるいは、ルーカス批判をクリアしているのか、といった点が気になっています。もう、誰もルーカス批判の観点を持ち出さなくなっているのですが、政策が変更されると構造的なパラメータもそれに合わせて違ってくる可能性は否定できません。もちろん、そんなことを言い出せば不可知論に陥るので深入りはしませんが、政策変更による反応は考えておくべき課題のひとつかと考えます。
少しさかのぼって考えると、広く知られているように、経済学的なEBPMの基礎は医学のEBM(Evidence Based Medicine)でした。医療に関しては、患者がどういう治療や投薬を受けるかで患者の行動が変化することはほぼほぼない、と考えて問題ありません。しかし、経済政策については政府の政策により家計や企業の行動や選択の基となる構造的なパラメータが変化することがありえます。その点を誰も議論しようとしないのは不思議です。医学で活用されたEBMを経済学的なEBPMへ適応させるのは少し異なるはずなのですが、見落とされている気がしなくもないです。
最後に、因果関係を見る際にも、私は割と雑に単変数=univariateな時系列を考えるもので、双方向で互いに因果関係を形成している場合が少なくないと感じています。例えば、双方向ではなく3方向ですが、肥満、低所得、喫煙は3つ巴でグルリと因果の輪を形成している可能性があります。世間一般でも「悪循環」という表現があり、悪い例かもしれませんが、ギャンブルで負けが込んでくると、さらに掛け金をつり上げてますます負けが大きくなる、といったケースもないではありません。いずれにせよ、双方向の因果関係を含めて、どれかひとつのボタンを押せば、それ以降の結果がすべて変更されるというのは単純に過ぎる可能性、あくまで可能性ですが、そういった可能性は忘れるべきではないと思います。

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