原田泰・井上智洋・中里透[編著]『政府支出を考える』(金融財政事情研究会)を読みました。
編著者は、順に、名古屋商科大学ビジネススクール教授、駒澤大学経済学部准教授、上智大学経済学部准教授です。
本書は、タイトル通りに財政支出について考えているのですが、序章のタイトルが「なぜ政府支出が重要なのか - バラマキは悪くない」となっていて緊縮財政とは一線を画している一方で、表紙画像にあるように「効率的な政府支出」についても目を配っているようにも受け止めています。本書では現れませんが、「ワイズ・スペンディング」という言葉も一時は流行した記憶があります。基本は、効率的な支出と軌を一にする用語であろうと考えるべきです。
本書の構成は序章を別にすれば、12章から成っており、各章の中心は公共投資、医療、介護、産業政策、中小企業政策、エネルギー政策、農業政策、科学技術政策、地方交付税、労働政策、少子化対策、そして、EBPMとなっています。主要な政府支出項目に着目しているわけですが、誠に残念ながら、私のホームグラウンドである教育政策は科学技術政策や地方交付税の一部として現れるだけです。
大きなテーマは財政の効率化のように私は受け止めましたので、バラマキとは対極にあるような気もします。ただし、私が2023年の紀要論文 "An Essay on Public Debt Sustainability: Why Japanese Government Does Not Go Bankrupt?" で展開したような政府財政のサステイナビリティについては、歳入がスコープ外ですので、特段の分析は収録されていません。
各分野についてはとても詳細で示唆に富む分析がなされていますが、社会保障では医療と介護だけが取り上げられており、金額で一定のボリュームを占める年金が議論されていない点については少し違和感があります。年金は別にして、医療について国民皆保険を現状のまま維持する困難については私も同意します。
また、農業政策については、経営体への支援、あるいは、個別補償と生産物価格支持をデカップリングすべきという見方は、その通りと思いますが、自給率という世界でも類を見ない農業政策の目標については、どう考えるべきか、もう少し踏み込んだ議論が欲しかった気がします。
最後に、環境政策・気候変動対策はエネルギー政策の中で議論されていますが、もはや一国の枠内で議論する限界を感じるのは私だけではない気がします。
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