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2026年09月10日07:29

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吉田修一『タイム・アフター・タイム』(幻冬舎)

吉田修一『タイム・アフター・タイム』(幻冬舎)を読みました。
著者は、長崎出身の芥川賞作家であり、最近では映画化された『国宝』の作者、ということになっています。純文学も大衆文学も、という二刀流です。
本書は、作家デビュー30周年という記念作品であり、日経新聞に連載されていたものを単行本にして出版されています。出版社の方でも特設サイトを開設しています。
本書の主人公はともに長崎出身で、高校の同級生だった久遠愛とオッソーこと尾崎颯です。冒頭で、2人が土砂降りの雨の中で、偶然にもタクシーに同乗して20年ぶりに出会います。同じ都立多摩公園に建設する美術館のプロジェクトで、オッソーは建設会社の、そして、久遠愛は広告代理店の、どちらも担当者でした。
そして、主人公2人の高校生のころの長崎にさかのぼって、長い長いストーリーが始まります。久遠愛は酒屋の娘で、兄は酒屋を継ぐことなくトラック運輸の仕事を始めます。兄妹の母親は亡くなっていて、父親が再婚した継母がいたりします。オッソーは両親が離婚した母子家庭で、母親が県議会議員との不倫の際に交通事故死し、母親の妹である叔母の家に引き取られます。県議会議員の妻は高校にやってきて、オッソーに対して自分の夫はオッソーの母に誘惑されたとか、恨みごとを述べて去って行きます。その後、この女性は夫の後を引き継いで県議会議員から国会議員になったりします。叔母は子連れの夫と再婚していて、その連れ子はオッソーから見ると義理の従妹になるわけですが、オッソーや久遠愛と同じ高校の下級生だったりします。
オッソーも、久遠愛も高校の成績は悪くなく、高校も進学校ですし大学進学を目指していますが、2人は高校3年生の夏休みには、友人たちとともに男女2人ずつの4人で友人の親が経営する民宿の手伝いのアルバイトでひと夏を過ごし、2学期になってからもオッソーは週末ごとに久遠愛の部屋を訪ね、久遠愛の兄は暖かく見守ります。
しかし、高校3年生の冬休みになって、オッソーは叔母の家に居づらくなり、大学受験を目の前に控えて、久遠愛とともに沖縄へ逃避行に出ます。まあ、ここから先は読んでみてのお楽しみです。沖縄への逃避行は、特設サイトに吉田修一自身のエッセイとして日経新聞4月12日付けの「伊平屋島の卓球台」が転載されていますから、何とかギリギリでネタバレではないと思います。
本書については、いろんな評価を見かけます。私はもともとがこの作者が大好きですし、この作品も500ページを超えるボリュームながら、ほぼほぼ一気読みでした。高校生という青春時代ながら、まあ、お子さまの恋愛ともいえるラブストーリー、それに加えて、20年余り後の40代のラブストーリー、ともにみずみずしい男女関係が明確な筆致で描き出されています。
人物の造形が素晴らしいですし、作者の郷里である長崎、主人公2人が高校生活を送る長崎についても、私は長崎大学勤務の経験から親しみを持っています。ものすごくオススメの作品です。この作者のファンでなくても、『国宝』の映画を見ていなくても、ぜひとも読んでおくべき作品だと思います。
ただ、最後に、ほぼほぼすべての登場人物の家庭、というか、夫婦関係がまだLGBTQなどの少数派であればまだしも、何らかの破綻の要素を持っているような気がして、少し、そのあたりは小説という特殊な作られた世界であるような気がしました。私の両親や私自身のような偕老同穴の夫婦関係ではありません。

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