mixiユーザー(id:68108846)

2026年08月31日07:43

27 view

植田健一『経済成長』(日本評論社)を読みました

植田健一『経済成長』(日本評論社)を読みました。
著者は、当時の大蔵省からシカゴ大学で学位を取得して転籍し、現在は東京大学経済学部の教授です。本書は、著者の講義ノートを基に『経済セミナー』にマクロ開発経済学として連載されていたものを単行本に取りまとめています。ですので、後半にルイス的な転換点とか、ハリス=トダロ・モデルなどが言及されています。
まず、序章では、シカゴ大学での研究成果を活かして、なのか、何なのか、ケインジアン的な財政政策や金融政策の議論は長期的な経済成長を考える上では無意味、と断定しています。表現は慎重であるべきですが、まあ一定理解できます。
逆に、私が問いたかったのは、もともとが開発経済学ですので、国際開発援助(ODA)あるいはODAによるビッグプッシュの役割です。ただ、タイトルを変更していますので、スコープ外だという気はします。全体的な印象として、政府の役割がそれほど重視されていないわけですので、ODAの役割は雰囲気で理解すべきかもしれません。
本書の構成は、冒頭章で経済成長論の導入を示した後、ソロー=スワン・モデルとその発展形であるキャス=クープマンス・モデルといった新古典派経済成長理論を取り上げた後、内生的経済成長理論としてAKモデルとローマー・モデルに着目し、さらに、内生的経済成長理論に人的資本の要素を加えたマンキューらの "A Contribution to the Empirics of Economic Growth" やスミスの協業に基づく分業などを論じ、実証ほかのトピックを加えています。
私は学部で経済成長論や開発経済学を教えることはありませんが、大学院の修士論文指導で補完的に取り扱うことがあり、その際は、アセモグルによる Introduction to Modern Economic Growth をオススメすることにしています。あるいは、本書の評価が確立されれば、日本語による経済成長論のテキストのひとつになる可能性があります。
構成としても標準的であり、例えば、私が役所の同僚と共著で書いた "Japan's High-Growth Postwar Period: The Role of Economic Plans" は経済計画が経済発展や成長に果たした役割を解説していて、東南アジアの大学院で教えるテキストを目指していたのですが、付録で成長論についても言及していて、やっぱり、新古典派的なソロー=スワン・モデルと初歩的な内生的成長論のAKモデルを取り上げています。
本書が学部レベルか、大学院レベルか、については、私はそれほど専門性を持ちませんが、政府の指導要領などでかなりの程度に均一化された中等教育と異なり、大学での高等教育レベルでは大学により違いそうな気がします。東大なら学部で、あるいは、特に名を秘す某大学では大学院で、といった違いはありそうです。
最後に、第1章 p.24 でカルドアの定型化された事実に対比するような形で3点上げられている (1) 成長率の低下、(2) 労働分配率の低下、(3) 金利で代理した資本収益率の低下、についても、ギリギリ成長論のスコープ内か、外か、際どいところですが、不十分にせよ何らかの示唆が欲しかった気がします。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する