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2026年08月09日23:12

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鐵百合奈@豊洲シビックセンターホール

未完という永遠 ― シューベルト『レリーク』の彼方へ

あの某サロンでのリサイタルから2か月。
異常なほどの温度の低さがコンディションに影響があっただろうと察する。なにしろピアノを弾いていないときは必ずカイロを握っていたくらいなのだから。
ただあのときはこのリサイタルに行くのをやめようかとさえ思った。
2か月という時間が前向きにさせてくれた。

鐵百合奈:ピアノ(FAZIOLI)

01.シューマン:森の情景 Op.82より 森の入口、予言の鳥
02.オーンスタイン:森の朝
03.ラヴェル:鏡(蛾、悲しい鳥たち、海原の小舟、道化師の朝の歌、鐘の谷)
04.リスト:灰色の雲 S.199
<休憩>
05.シューベルト:ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 D840『レリーク』(4楽章版)
<アンコール>
06.リスト:ばら S.556-2(シューベルト 歌曲 D.745 による)
07.シューマン:トロイメライ(子供の情景 より)

前半はラヴェルの出来が良い。
ただどうしても力任せの印象は否めない。必ずしもそれが悪いとは言えないが、メリハリはあるもののラヴェルには少し粗いかなという風に感じてしまう。もちろん決して悪い演奏ではない。

それ以上にリストが良かった。
晩年の無調に入りかけた曲。とてもナイーヴな演奏。というのもこの曲には強奏がない。
最後の神秘和音を思わせるパッセージが意味深に聴こえたのは彼女の解釈なのだろう。

休憩を挟んでシューベルト未完のソナタ。
楽譜を発見したシューマンが絶筆と思い、そのため『レリーク』と愛称で呼ばれることになったが、もっと前の作品であることがわかっても愛称はそのままになっている。
4楽章構成(だと推測)なのだが、第3楽章はかなりの部分ができているが、第4楽章は展開部に入ったところで途切れている。
通常は第2楽章までが演奏される。補筆完成版もいろいろあるようだ。それを今回はシューベルトが筆を絶ったまま弾いた。
リヒテルの録音があるとはいえ、これは珍しい。
未完成交響曲が2楽章までで完結して聴こえるように、レリークもそうだと思っていた。
ところが違っていた。
第2楽章までは暗く引きずるように進んでいくが、メヌエットと思しき第3楽章では一転明るくなり、第4楽章はチャーミング。
印象が変わった。
4楽章の提示部はリピートしていたためボリューム感も十分。これはこれで4楽章のソナタとして十分聴けるのではないかという気がした。ところが最後は本当に途切れるように終わる。さあこれからというところでプッツリ。それがなんとも切ない。
終わらなかった先に何があるのか、そんな空想が膨らむ。
それこそが彼女の意図したものだったろう。
もう補筆版はいらないかもしれない。

FAZIOLIをリサイタルで聴くのは初めてだ。
軽いが芯のある音で、きらびやかな音色だ。重厚感には欠けるが明晰な音という印象。
ここだけの話、三浦友理枝ちゃんに弾いてみてもらいたいと思ってしまった。

豊洲シビックセンターホールも初めて。
海の見えるホールというとおり、ガラス張りで確かに海が見える。
なかなかいいホールだ。

クリアファイルなんて凜々子姫くらいしか作らんだろうと思っていたら、彼女も作ったよ。

まだまだ注文を付けたいところはあるが、それは伸びしろということだろう。
優れたピアニストであることは間違いないのだから。
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