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2026年06月26日07:37

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マリエッチェ・スハーケ『テクノ・クーデター』(早川書房)を読みました

マリエッチェ・スハーケ『テクノ・クーデター』(早川書房)を読みました。
著者は、公共部門を専門とするテクノロジー、政策、地政学のエキスパート、とあるだけで、出版社のサイトにもまったく情報はありません。2009-19年にオランダ選出の欧州議会議員を務めています。英語の原題は The Tech Coup であり、2024年の出版です。
本書では、Google、Meta、Amazonといったシリコンバレーの巨大IT企業、いわゆるGAFAMと総称されたりするテック企業が私たちの生活と国家制度に深く入り込み、巨大な権力を掌握しつつあるという実態を明らかにし、そのため民主主義が危機に陥りつつあると示唆しています。
国民主権の下での民主主義に代替する形で、テック企業がインターネット通信のみならずSNSなどを介して、国家が担うべき機能を担うようになれば、サービス提供の公共性が失われ、説明責任が果たされなくなる恐れが強まる、という主張です。本書で例として上げているのは、イーロン・マスクによるスターリンク衛星の運用の恣意的な非公共性です。すなわち、ウクライナ政府の要請をマスクは拒否し、戦争や武力衝突における影響力を民間企業が持ってしまった姿が明らかになったりしています。
もちろん、SNSで不正確な情報を拡散すれば選挙結果に影響をおよぼしかねないことは、日本でも兵庫県知事選挙などで明らかになった通りです。現在の日本の高市総理が選挙の際に誹謗動画作成に関わったかどうか、についても国会で追求されているところです。そういったすべてをテック企業が操作しているわけではありませんが、何らかの国家レベルの影響力をテック企業が持つようになりつつあるのは事実であろうと私も想像しています。
ただし、私がエコノミストとして困惑しているのは、イノベーションと民主主義のトレードオフです。すなわち、テック企業によるイノベーションを進め、経済的な果実を得るためにはテック企業の自由な企業活動を許容する必要がある一方で、自由な企業活動によりテック企業が国家権力の一部なりとも代替してしまうリスクがあります。逆に、民主主義の危機に際してテック企業の影響力を低減させようと規制を強化すると、イノベーションの利益が低下するおそれがあります。
極端なコントラストを示せば、米国ではイノベーションの利益のために民主主義が危機に瀕しており、欧州では民主主義を守るための規制によりテック企業でのイノベーションに遅れが生じています。何と、日本は米欧の悪いとこ取りで、イノベーションが進まない上に民主主義が危うくなっている、と感じるのは私だけでしょうか。
本書は、そういったトレードオフの中でイノベーションの利益ではなく、イノベーションを犠牲にしても民主主義を重視する見方が示されています。現時点で、ぜひとも読むべき本の1冊だと私は考えています。

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