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2026年06月02日07:45

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齊藤誠『日本経済を診る』(ちくま新書)を読みました

齊藤誠『日本経済を診る』(ちくま新書)を読みました。
著者は、國學院大學経済学部教授です。
本書では、タイトル通りに、日本経済についてマクロ経済の面からデータをていねいに読み解こうと試みています。
その上で、意外性ある処方箋を出そうという意気込みではなく、割合と正直に判らないことは判らないと積み残している点は好感が持てます。典型的には、第5章にあるように、2018年末から2020年半ばの円安は金利平価説から逸脱していて、「明解に説明することができない」と結論しています。金利平価説より現実をよく説明できる適当なモデルを探している、といったところでしょうか。
続く第6章では、現在の株高は企業収益に支えられたものであり、労働分配率を低下させて株高が実現している点を率直に診断しています。私も同じ結論です。ただ、労働分配率を上昇させるには賃上げだけでは不十分という診断であり、その理由は賃上げが価格に転嫁されるという前提です。今までは、賃金停滞をせっせと企業収益に注ぎ込んできたことを率直に認めつつも、賃上げは価格に転嫁されて分配率にはそれほど響かないという非対称性の根拠を私は読み取ることができませんでした。
企業が収益を上げている事実を背景に株高が進行していて、逆に、労働者への還元がそれほどではなく、株高に関係薄い国民が取り残されている、という事実をどう考えるかはひとつの視点だと思うのですが、そういった議論はそれほど重要ではないと見なしているのかもしれません。
もうひとつ、私が疑問に思ったのは、貯蓄投資バランスが政府と家計の間だけで議論されている点です。本書では企業が貯蓄過剰主体になった点についてはまったく無視されています。例えば、本書に限らず、なのですが、コロナショックの時期の政府の特定給付金は貯蓄に回って経済下支えにはつながらなかった、かのごとき議論を見受けますが、ホントに問題なのは企業が内部留保を溜め込んで、一定部分は株主に還元しているとしても、賃上げや設備投資という形で国民経済に広く還元してこなかったのが日本の長期停滞の一因と私は考えていますが、本書では円安について、円安で収益を上げやすくなる輸出企業と輸入品の価格上昇で苦しむ国民を対比させている一方で、企業行動については、ほとんど本書でいう「診断書を書く」ことがなされていません。やや不思議な気がしました。
最後の第11章では「健全な経済」のための政策処方箋として、章タイトルの副題になっている「財政規律の回復」を目指したプライマリバランスの黒字化の必要性を主張しています。結局、これが主たる眼目なのだろうか、と考え込んでしまいました。貯蓄過剰主体となった企業を抜きに、政府だけの財政規律を論ずる意味を私は理解できませんでした。

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