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2026年05月14日07:22

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中村隆之『今こそ経済学を問い直す』(講談社現代新書)を読みました

中村隆之『今こそ経済学を問い直す』(講談社現代新書)を読みました。
著者は、青山学院大学経済学部教授であり、ご専門は経済史、経済思想史だそうです。京都大学経済学部の八木先生の門下生だったようですから、マルクス主義経済学がご専門かもしれません。
結論として、とてもいい経済書です。ひょっとしたら、少し前に取り上げた私の同僚である松尾匡先生の『「上」vs.「下」の経済学』より良質の経済書かもしれません。すなわち、私が普段から感じている点について、それなりの正しい方向性を示している気がします。
冒頭で、経済成長の限界を2点から説き起こします。第1に、自然環境の制約です。第2に、経済の成熟化に伴う変化であり、金銭の支払い意思で示される購買欲求と必要性の乖離です。まず、マイクロな経済では、伝統的な経済学は、売り手と買い手がともに市場で交換すれば、本書でいうところのwin-winの関係になることを示しています。しかし、実際には、本当に社会的必要性を満たしているかは疑問であると本書では指摘しています。そして、マクロ経済のフィールドでは、ケインズ卿が指摘するように、市場は雇用の自動調整機能を持たない、と指摘しています。
ほぼほぼ、私は本書の指摘や結論に賛成していますが、私なりの言葉で言い換えれば、経済学では労働サービスも含めて市場に商品として供給される財やサービスに価格をつけて、その価格を支払える購入者にそういったリソースを配分する機能を有していることは事実です。そして、そういった価格に応じた資源配分がもっとも効率的であることも証明されています。
ただし、購買力たる貨幣は持たないが必要性の高い企業や家計に財やサービスを供給する機能はありません。ですから、日本をはじめとする先進各国で典型的に市場における供給と購買力に基づいた配分を部分的なリとも回避する仕組みがあるのが、現時点では、医療をはじめとする社会保障と教育です。
私が活動している教育、大学教育に引き付ければ、高いレベルの教育を提供する大学の教育サービスは市場における価格に従って、すなわち、高い値段でオークションのように競り落とされるわけではなく、入学試験を通して、教育を受ける準備が整っている学生に対して提供されます。医療はもっと必要に応じて、社会的に標準とされる価格で提供されます。
私はこういった社会的な必要に応じた供給というものが広がる必要を感じています。社会的な必要に応じた供給という本書の大きなテーマのひとつは、ピケティ教授のいうところの脱商品であり、斉藤准教授のいうコモンの拡大にほかなりません。現在の日本では、まだ医療をはじめとする社会保障や教育にとどまっている社会的な必要に応じた供給、市場を通じない脱商品としての供給を、さらに拡大して、まずは住宅、さらに、交通や通信、もっと拡大するべき分野も少なくないと思っています。そういった方向性を指し示し、かなりの程度に理論的な展開も本書では見せています。多くのひとにオススメです。

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