東京二期会によるベルクの『ルル』。
ベルクは大好きな作曲家。『ルル』は大好きなオペラ。ただベルクの死により未完となってしまったことから、『ヴォツェック』の方が上かなあ、なんてことを思っていた。ツェルハによる補筆完成版の肯定派ではあるが、それだけにベルクの最高傑作と言うにはためらってしまうのだ。
今日の舞台を観て、これなら2幕版でも良いかもしれない、と思った。
オスカー・ヨッケル:指揮
カロリーネ・グルーバー:演出
東京フィルハーモニー交響楽団:管弦楽
宮地江奈:ルル
豊島ゆき:ゲシュヴィッツ伯爵令嬢
持田温子:劇場の衣裳係、ギムナジウムの学生
峰茂樹:医事顧問
岸浪愛学:画家
黒田祐貴:シェーン博士
澤原行正:アルヴァ
山下浩司:シゴルヒ
菅原洋平:猛獣使い、力業師
市川浩平:公爵、従僕
倉本晋児:劇場支配人
中村蓉:ダンス
01.ベルク:歌劇『ルル』(2幕版)
マネキンを多用した演出。
殺風景とすら言える、幾何学的な舞台。
もともと現代劇なので、違和感はない。むしろシンプルで観やすい。
ルルはピンクの髪に白いキャミソールのような衣装。それに赤のストッキング。
その声に驚く。可愛らしく透明感がある。その中に凛とした強さも感じる。
好ましいルルだ。
ルルは悪女なんかではない、そういう主張のある声だ。
そして現実のルルに対してその魂を演じるダンサー。
ルルと同じ出で立ちで、現実に対する魂、表に対する裏。
この演出が素晴らしい。そしてそれを実現させたダンサーも。
歌手陣は充実していて、総じて高水準で見事だったと思う。
シェーン博士は少し線が細いかなという印象ではあったが、注文を付けるほどではない。
シゴルヒは怪演っぽくて良かったな。
さすがにオケは巧い。
ベルクの音楽はエモーショナルだ。十二音で書かれていることが信じられないほど。
2幕後は通常通りルル組曲から演奏されるが、通常とは異なり、ルルは殺されない。
その代わりに自己を取り戻すかのように、魂と共鳴する。
ああ、こういう結末もアリなのか。
心が震えた。
これなら2幕でも良いではないか。
元々のベルクの構想とは異なるが、ベルクの音楽のみで、きっちり決着が付いている。
ルルが死ぬのは3幕版でないと必然性に欠ける。
ルルを演じた宮地江奈は素晴らしいソプラノだ。
ツェルビネッタを歌ったら似合いそうだが、ルルがここまでハマるとは。
可憐な声だからこそ、悪女と言い切れないルルを演じることができたのだろう。
彼女のルルは本当に好ましい。
声量も申し分なく、2幕の長大かつ難度の高いアリアも難なく歌いこなす。
忘れることのできないものになった。
手配が遅かったので、遠い席だったが、観ることができてよかった。
そういえば、近くに小学校中学年くらいの女の子がいて、どうやら一人で観に来ていたようだ。
内容自体は子どもに相応しいとは言えないが、だからと言って子どもが聴くべきではないとは思わない。
子どもだからこそ多くのことを感じることもできるだろう。
彼女にとっても忘れ得ぬものになってくれればと思う。
余計なお世話か。
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