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2026年03月11日07:48

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山口二郎『現代ファシズム論』(朝日新書)を読みました。

山口二郎『現代ファシズム論』(朝日新書)を読みました。
著者は、長らく北海道大学の教授だと私は思っていたのですが、今は法政大学法学部の教授だそうです。前世紀ながら社会党の村山内閣のブレーンだったり、今世紀初頭には政権交代した後の民主党の鳩山内閣などのブレーンであったと私は認識しています。
本書では、タイトル通り、約100年前の戦間期のイタリアやドイツのファシズムではなく、現在の21世紀における民主主義の危機を現代型のファシズムという観点から分析しようと試みています。ただ、その前提として、戦間期ファシズムの成立の3条件を上げています。すなわち、第1に、民主主義の宿命ですが、民主主義を否定する勢力の拡張です。ロシアで成立した共産党政権とか、イタリア・ドイツのファシズム政党などを上げています。第2に、オルテガ・イ・ガセットの論点で、普通選挙制による民主主義を担う市民層の拡大により、それまで所得や資産の裏付けのある教養や公共的な精神を持った市民だけではなく、自己の利益を追求するグループも参加を拡大した点です。第3に、1929年から始まる世界恐慌と経済危機により、合理的に判断できる基盤を失った市民が少なくありませんでした。加えて、ウンベルト・エーコ『永遠のファシズム』からファシズムを構成する14の要素をpp.15-16に列挙しています。
その上で、戦後から1970年代くらいまでは安定した経済成長とともに民主主義が機能していた一方で、1980年代から新自由主義的な経済政策運営とともに民主主義が怪しくなり、21世紀に入り、特に、2016年の英国のいわゆるBREGXITや米国でのトランプ大統領を選出した大統領選挙あたりに象徴されるように、民主主義が危機に陥った、と指摘しています。
その21世紀の民主主義の危機の背景としてグローバル化への反発、SNSをはじめとする情報やコミュニケーションの変化を上げています。経済面では、新自由主義的経済政策とともに、まるで営利企業を経営するような国家運営が始まり、国家が政権権力者の家産国家化した、との結論を導いています。
要するに、トランプ大統領に対して "No King" とのプラカードを持ったデモがあったように私は記憶していますが、国家が権力者の私物になって、権力さえあれば、嘘をついても不法行為をしても、何でも許されるという日本でも安倍内閣から菅内閣のころに見られた国家観が示されています。
そして、慶応義塾大学の金子勝教授の著書のタイトルを借りて、フェイク=虚偽をフルに活用したファシズムという意味で、現代型のファシズムを『フェイクファシズム』と読んでいます。また、第6章では米国のトランプ政権を運動、思想、体制の3つの観点からファシズムであるかどうかについて短い考察を提供しています。トランプ政権の分析とそれに続く左派勢力のファシズムへの対抗などについては、読んでみてのお楽しみです。
最後に、私自身はこの著者に対して、一定の親近感は持っているものの、それほど強い思い入れはありません。1980年代だったと思いますが、強烈に小選挙区制を推奨していましたし、かつ、村山内閣の成立時に当時の社会党に安保や自衛隊に関して、いわゆる「現実路線」を主導したりと、なし崩し的な左派勢力の右傾化を進めてきたような印象もあります。したがって、本書に関してもいわゆる「左からの批判」が出る可能性があると認識しています。はい、期待しているのではなく、予想しているだけです。

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