鳥山まこと『時の家』(講談社)を読みました。
著者は、小説家であり、京都府立大学から九州大学大学院を終えており、ご専門は建築のようです。本作品は第174回芥川賞受賞作品です。
一応、お断りですが、表紙画像は単行本のバージョンを引用していますが、私は『文藝春秋』2026年3月特別号にて、選評や受賞者インタビューとともに読んでいます。ですので、単行本の読者よりは、ある意味で、情報は豊富かと考えています。
まず、主人公はタイトル通りに家なんだろうと思います。冒頭、30代半ばの男性が『売物件』と掲示された家に忍び込んで、その家を中心に人々の暮らしや何やを描写しています。ストーリー全体としてはタイムスパンも長くて、決して短文ではないのですが、各センテンスはとても短くしてあります。テンポがよくなっています。
私なんかが大学や大学院で論文指導をする場合に、「一文一義」という原則を最初に教えます。そういった短いセンテンスの文章が続きます。ただ、取壊しの際の描写にはセンテンスが長くなり、取壊しが終わるとまた短いセンテンスに戻ります。このあたりは意識して書いたのであれば素晴らしい技巧ですし、無意識にそうなったというのであっても素晴らしい文章センスだと感じました。
ただ、短いセンテンスにしては前半はモッチャリした描写が続きます。吉田修一の選評によれば、立ち上がりが遅い、暖房器具だったら風邪をひく、と表現されています。ただし、逆にそのペースに慣れれば段々とストーリーにのめり込む読者もいそうです。
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