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2025年12月09日08:25

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稲村悠『謀略の技術』(中公新書ラクレ)

稲村悠『謀略の技術』(中公新書ラクレ)を読みました。
著者は、警視庁にて公安部捜査官として諜報活動の捜査に従事した経験を持ち、現在は日本カウンターインテリジェンス協会代表理事です。諜報活動やサイバー攻撃に関する警鐘活動に従事している、とのことです。
本書では、いわゆる諜報活動を5種類に分類していて、p.28にある通りです。どうしても、オープンソースから情報を得るオシントが、ベリング・ザ・キャット=Belling the Catの活動などから注目されやすいのですが、本書でも指摘しているように、ヒュミント、あるいは、ヒューミントと呼ばれる対人接触を基に人的情報源から得る情報というのが、たぶん、もっとも価値あるんだろうという気がします。
一般に、情報収集は専門家しかやっていないわけではなく、多くの人が何らかの情報収集活動を行っていると思います。ただ、本格的な諜報活動となれば、人には知られたくない情報を取得しようと試みるわけですので、私なんかが経済統計をウォッチしているのとは違います。もちろん、私も長らく公務員でしたし大使館勤務の経験がありますから、まずは公開情報から初めて、場合によっては先方政府の情報源に当たって情報を入手する、というヒュミントの活動をする場合もあります。
本書では、私がやっていた経済情報などの収集というチャチい情報収集活動ではなく、米国のCIA、英国のMI6、あるいは、旧ソ連のKGBのスパイ、いかにも映画に出てきそうなスパイがやっている諜報活動について、多くの事例を上げて警鐘を鳴らしています。ただ、一般的な出版物などからのヒュミントの例ですので、政策的なセキュリティ・クリアランスといった生臭いお話は、それほど多いわけでは決してなく、むしろ、読み物的に実例を豊富に収録している印象です。ただ、そうとはいっても、私なんぞの一般ピープルには知り得ない内容が多く含まれていることは確かですから、警鐘活動には十分です。
最後に3点、私の感想です。繰り返しになりますが、第1に、ホントのインテリジェンス活動、諜報活動というのは、こういった一般向けの出版物には収録できないのだろうと考えるべきです。その意味で、諜報活動には、特に本書で着目しているようなヒュミントには、もっと奥深いものがいっぱいなんだろうと思います。第2に、本書で着目しているのは情報を入手する諜報活動なのですが、それと同等にその背後で情報を分析する活動というのも重要だと私は考えています。決して秘匿されていない、どころか、新聞にデカデカと掲載される「長期金利1.9%」の数字から何を読み取るのかがエコノミストの能力だと考えるのと同じです。第3に、最後に、私自身深く自覚しているところですが、本書で取り上げられているヒュミントの手法のうち、私はたぶんハニートラップに弱いと思います。まあ、そんな誘惑を受けたことはありませんが、たぶん、イチコロだと思って用心しています。

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