今年2月以来の東京文化会館でのリサイタル。
今回はバルトークの無伴奏というとんでもないプログラムを組んできた。
バルトーク国際コンクール2位という実績があるのだから、バルトークに対する造詣が深いのかもしれない。
というのはともかく、非常に硬派な難曲であるのは間違いない。
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三又瑛子:ピアノ
01.シューベルト:ヴァイオリン・ソナチネ 第2番 イ短調 Op.137-2
02.プロコフィエフ:ロミオとジュリエット、より
モンタギュー家とキャピレット家(グリュネス/編)
少女たちのダンス(グリュネス/編)
仮面舞踏会(グリュネス/編)
ジュリエットの死(ボリソフスキー/編)
<休憩>
03.バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz.117
04.ドビュッシー(ローレンス/編):月の光
05.パガニーニ(アウアー/編):24のカプリス 第24番 イ短調
<アンコール>
06.クライスラー:愛の悲しみ
07.クライスラー:愛の喜び
シューベルトは8月の名古屋以来か。
ソナチネというが、しっかりソナタである。
チャーミングな曲想が彼女の見た目にピッタリだ。
しなやかでよく歌うヴァイオリン、もちろんそれも彼女の持ち味である。
続いてプロコフィエフ。
いわゆるロミジュリのヴァイオリン・バージョンは初めて聴いた。
荒々しさと激しさもまた彼女の持ち味。見た目とは相反するこの個性こそ彼女の本質なのかもしれない。
と思うほど素晴らしいのだ。
有名な『モンタギュー家とキャピレット家』の激しさと、『ジュリエットの死』の静謐な抒情性、そのどちらも�睫暈ァ校劼箸いΕ凜.ぅ�リニストの個性なのである。
初めて彼女のヴァイオリンを聴く人は、何かが違う、とその意外性に驚かされているはずだ。
休憩を挟んでいよいよバルトーク。
ヴァイオリン音楽の中で超絶と言っていいくらいに難曲であろう。
様々な奏法を駆使する、弱音器の着脱、といった物理的な技術ももちろんのこと、全4楽章息を抜けるところがなく張り詰めた緊張感を維持しなければならない。さらに時として民謡に根付いたメロディーを十分に歌わせる表現力も必要なのだ。
こういう曲を得意とする彼女のこと、期待は募った。
そしてその期待は裏切られることなく、想像以上に素晴らしいものだった。
これほど美しい音で奏でられたバルトークを聴いたことがない。
激しさや切れ味や荒々しさはそのままに、極めて美しい音で奏でられていた。ザラついた音ですら美しい。
そして美しく奏でられてこそバルトークの本音が聞こえるのではないかという気がした。
簡単に理解できるような曲ではない。聴き手にとっても難曲なのだ。
それでも今まで聴いたどの演奏よりも彼女の奏でるバルトークは伝えてくれるものが多かったように思うのだ。
第1楽章はやや速めのテンポだったか。様々楽想が変幻自在に表出される。
荒ぶるような激しい第2楽章。
ピンと張り詰めた空気感の中の静かに美しくしかも不穏な雰囲気の第3楽章。
第4楽章は左手でピツィカートしつつ右手で弱音器を着脱するという技巧を見せつつ、民謡風のメロディーを情感豊かに奏でる。
全楽章全てがクライマックス。
圧巻のバルトーク。
森羅万象の音がした。
名古屋でのヤナーチェクもそうだったが、こういう難しい曲がとても巧い。
持ち前の美しい音で奏でつつ、激烈な表現にも事欠かない。
�睫暈ァ校劼箸いΕ凜.ぅ�リニストの凄みがここに在る。
バルトークの後ではドビュッシーもパガニーニもアンコールに聴こえてしまうのは仕方あるまい。
とはいえ、真摯な演奏で耳をそばだたせられるのに十分ではあった。
アンコールはクライスラーを2曲。
リラックスした演奏で良いアンコールだった。
サイン会は相変わらず長い列。
カレンダーやクリアファイルといったグッズもある。
アイドルかよ、思うが、いいのだ。実力は半端ではないのだから。
どの曲も良かったのだが、今日はバルトークに尽きる。
彼女のお陰でこの曲への理解がもう少し深まったように思う。
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