劇場鑑賞時には「ご用意がありません」と断られた、映画『侍タイムスリッパー』のパンフレットだったが、上映館が全国100館に拡大されたことを受け、急遽、作られたと知り、人に頼んで買って来てもらった。さっそく、読んでみると、これがとても面白かった。映画のパンフレットを読んで、声を出して笑ったのは初めてだ。何が面白いといって、監督の安田淳一氏が書いた「侍タイムスリッパー制作顛末記」とでも呼ぶべき6ページにわたる原稿が傑作なのだ。
なんせ、タイトルも無しにいきなり、文章がスタートする。細かい活字がほぼびっしりとページを埋め尽くし、段落ごとのブロック分けもなければ、小見出しもない。改行して一文字目をスペースにもしていない。なんとも、読みづらい。お世辞にも、文章を書きなれた人のものとは思えない原稿だ。しかも、最後まで読んで、ようやく、これを書いたのが安田監督本人だとわかる始末。それでも、読めば読むほど面白い。もちろん、本人には「面白く書こう」とか「笑わせてやろう」という意図はないのだろう。「こんなことがあったんだよ」と居酒屋でお酒を飲みながら、一生懸命、友人達に語って聞かせているような、そういうレベルの文章だ。それが、とにかく面白い。時代劇を初めて撮ることになった男が、不慣れな現場で次から次へと失敗を重ねていく姿が目に浮かび、読んでいて本当に微笑ましい。大の大人がマジに叱られてシュンとしている箇所では声を出して笑ってしまった。
お金もなければ、時間もない中で彼があらゆることにこだわり、「時代劇制作のプロ達」に叱られ、厳しく指導されながらも、へこたれず、腐らず、プロ達の愛と忍耐に支えられて『侍タイムスリッパー』を完成させた顛末が、ここに明かされている。苦労に苦労を重ねた末に、それぞれのシーンが成立していることがとてもよく伝わり、感心した。
だいたい、このパンフレットそのものが「普通の映画のパンフレット」とはかなり趣きを異にしている。どちらかといえば、中学高校の文化祭プログラムに近い。主要キャストの顔写真、役名、俳優名、紹介はもちろん、スペースは若干小さいが脇役も同じく顔写真、役名、俳優名、紹介がある他、役名のない全出演キャストの顔写真と名前まで掲載されている。出演した端役の役者さんご本人はじめ、役者さんのご家族も大いに喜ばれたことだろう。キャストやスタッフに対して、こういう細かな配慮ができるのも「自主製作映画」の強みだと思う。
◆過去日記「侍タイムスリッパー」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988480039&owner_id=6007866
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