先日、マイミクのあまでうすさんがフェイスブックの記事で「『改憲を望まずさあれ第一條のみは認めがたしも象徴は言葉』『昭和天皇いまだ裁かれずその裔を崇むる不條理、太陽のごと』と歌う水原紫苑を、誰もがシカトする」と書かれていたので、そのコメント欄で、僕の知る限り唯一シカトしなかったのは、島田修三「本当のこと」（「角川短歌年鑑 令和６年版」巻頭言）でした云々と書いたら、島田修三偉い！とリプライをいただいたのだった。
「角川短歌年鑑」は3300円（税込）もする電話帳のような冊子で、角川「短歌」を定期購読していたり、年鑑に載っている歌人名簿が何かの理由で必要だったりするひと以外は、あまり手にすることもないのではないか、したがって島田修三さんの巻頭言もあまり読まれていないのではないかと思い、以下「本当のこと」のラストのくだりを引く。引用８首はいずれも水原紫苑の最近の作品である。
［以下引用］
改憲を望まずさあれ第一條のみは認めがたしも象徴は言葉
昭和天皇いまだ裁かれずその裔（すゑ）を崇むる不條理、太陽のごと
二・二六事件に心寄せたりしちちのみの父よ老いて天ちやんとよびき
そらみつ大和の濳主（ティラン）大和に死にてんげり あはれにあらずただあな、とのみ
亞米利加、天皇、邪�魁∂�主（ティラン）、戰後につぽんの�遒離▲薀戰好�
韓國（からくに）の邪�蛙鬚瓩憧攷諭覆�らひと）を蔑（なみ）したりける雙面（ふたおもて）はや
暗愚ながらアウラもちしか權力の育まむもの森羅萬象
國葬はくにを葬る秋ならばかへらざるべし血の蜻蛉島（あきつしま）
この八首に解説は要らないだろう。戦後天皇制への懐疑、昭和天皇その人への不信、失望が端的に歌われる。後半に並ぶ歌は「そらみつ大和」の国の大和西大寺駅前で銃撃された元首相への憚ることのない批評、そして彼が互酬的に深く関わった韓国を拠点とする宗教団体のこと、それから昨年九月の手続き不透明な国葬への激しい憤りが歌われている。多くの歌人が忌避し、または婉曲にしか歌わぬ「本当のこと」ではないか。水原紫苑という歌人が、華麗な歌集のところどころで、なにげなく見せる気合と意志と胆力の表出を私は心から爽快とするものである。
［引用終り］
水原紫苑の詠む「本当のこと」、なかんずく天皇制批判の作品に僕も注目して、「水原紫苑は闘っている」という記事を書いたことがあった（＊）。
（＊）
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986105013&owner_id=20556102
また、「舟」43号掲載の拙詠15首に〈「王制とわれ相容れず」韜晦を蹴りて水原紫苑は詠めり〉という歌を入れて、それを紹介した記事（＊＊）の注記で上記の島田修三さんの文章に触れたのだった。
（＊＊）
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986578502&owner_id=20556102
当時のいわゆるリベラル派の人々の多くは、しかしなお天皇制批判という場所に立つことはなかった、それはなぜかというと……、と何十年あるいは何百年かの後に語られるようになるだろう。もちろん僕はとうにこの世にはいないが、時々あちらからこちらを覗いて、そんな言葉も聞いてみたいものだと思う。
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