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2024年03月25日23:32

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3/24 ライトアップ木島櫻谷@泉屋博古館東京

木島櫻谷は泉屋博古館東京で何度も特集されているが、好きなので見飽きない。六本木一丁目駅からすぐの小さめ美術館というのも気軽に行かれる理由。

ランチは大連餃子基地のサンラータンメン。土日もやっていて11時開店の数少ないお店だ。
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今回の木島櫻谷展は、なかなか工夫があって面白かった。
第一展示室は、琳派を思わせる金地ピカピカ六曲一双の屏風がコの字型に5点並び、目も眩むよう。その向かいには、櫻谷の師匠・今尾景年の墨画淡彩《深山懸瀑図》が掛かり、幽玄の世界でビシッと締めている。
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第2展示室からは、加筆系の円山派と減筆系の四条派を紹介しながら、その視点で櫻谷の作品を分析していこうというもの、単に動物画が上手いにとどまらない櫻谷の魅力に迫っている。
第4展示室は文化財修復事業成果の紹介であったので、量的には少ないが、ここと大倉集古館を合わせて行くのならいいだろう。

https://sen-oku.or.jp/program/20240316_spotlightonokoku/
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大正中期に大阪天王寺の茶臼山に建築された住友家本邸を飾るために描かれた木島櫻谷の「四季連作屏風」を全点公開します。
大正期の櫻谷は、独特な色感の絵具を用い、顔料を厚く盛り上げ、筆跡を立体的に残し油彩画のような筆触に挑戦しています。そのために櫻谷は、「技巧派」などと称されましたが、櫻谷の真骨頂は、それに収まらない極めて近代的なものでした。リアルな人間的な感情を溶かし込んだ動物たちは絵の中で生き生きと輝きはじめ、とりわけ動物が折節にみせる豊かな表情は、観る者の心に沁みます。
江戸時代中期(18世紀)京都で生まれた円山四条派の代表的な画家たちによる花鳥画表現を併せて紹介することで、櫻谷の「生写し」表現の特質をライトアップします。



1 四季連作屏風のパノラマ空間へ、ようこそ。

《柳桜図》《燕子花図》《菊花図》《雪中梅花》の四季連作と《竹林白鶴》は全て初見ではないが、全部いっぺんに見たのは初めて。展示室が煌びやかである。住友春翠が茶臼山の本邸のために注文したというから、どんだけ〜〜である。
《柳桜図》
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《燕子花図》(これのみ撮影可)
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《菊花図》
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《雪中梅花》
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《竹林白鶴》(画像は右隻のみ)
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一見して尾形光琳風であるが、キャプションを読むとそれだけではない、櫻谷の工夫が見られるという。
例えば、紅梅の木に降り積もった雪や菊の花弁は絵具を盛り上げ、立体感を出している。白菊の花弁は「彫り塗り」といって、輪郭線を残す技法だし、アクセントになる朱菊は筆先で突くように塗ってビロード感を出しているという。
私が好きなのは《柳桜図》で、下から見上げているようにも、上から見下ろしているようにも見える構図が、春のシャワーを浴びるような気持ちになる。

この展示室、背にした面には櫻谷の師匠・今尾景年の墨画淡彩《深山懸瀑図》
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2 「写生派」先人絵師たちと櫻谷

円山応挙《双鯉図》
江戸時代中期、円山応挙は「写生(生写し)」を重視。鱗の一つ一つがリアル。
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応挙の門下生たちは「円山派」と呼ばれ、のちに応挙に学んだ呉春を祖とする「四条派」が生まれる。そして、円山派は筆数を増やすことで緻密な描写をめざす加筆傾向に、一方の四条派は俳諧味を意識して減筆傾向となった。さらに時代が下ると両者の融合も現れ、一括して「四条円山派」と呼ばれ、京阪画壇の中心となる。

伝 森徹山《檀(まゆみ)鴨・竹狸図》
狸がオケラを物色する。興味津々の表情。加筆系緻密な毛描きと四条派風な軽妙な描写が見事。吉祥的でも文学的主題でもない狸を描く新しさ、のちに「狸の櫻谷」と呼ばれた櫻谷も影響を受けたのではないかとキャプションにあり。
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木島櫻谷《秋野狸図》(画像は部分)
こちらは、付立て風のにじみや濃淡で、毛描きを減らしている。画像では見えないが上方の月は細い三日月、弧線を描く秋草、ぼんやりとした描写が年老いた狸の心情を写すかのように詩情がある。
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木島櫻谷《狗児図》(画像は部分)
この全体画像が見つからず、すごく残念。櫻谷は犬や猫を飼っていて、多く写生している。これはその犬がまだまだ子犬の時。究極の減筆で、ものすごく愛らしい子犬の寝姿を描いている。本日の妄想お持ち帰りは犬だけれどこちら。
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森一鳳《猫蝙蝠図》
森派の祖・森狙仙は猿の毛並みのふわふわを出すのがうまかったが、こちらは減筆派。毛描きは一切していないのに、猫の体のやわらかさが伝わる。ちなみに猫も蝙蝠も長命・福の吉祥モチーフ。これも持ち帰りたい。
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3 櫻谷の動物たち、どこかヒューマンな。

で、やっぱり櫻谷の魅力は動物画かな。よく言われる「伝統と革新」だけでない何かがある。なるほど、それが表題にある「ヒューマニズム」ということなのか、と、なんとなく納得。

木島櫻谷《獅子虎図屏風》
同時期に、おそらく同じ動物園のライオンとトラを見て描いた竹内栖鳳の絵を思い出す。描き方など近代的で、とても似ているようだけれど何かが違う。栖鳳のライオンが雄々しい野獣そのものが前面に出ているのに対し、櫻谷のライオンは孤独を背負ってちょっと寂しげに見えないこともない。感情移入がしやすいのよね。
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木島櫻谷《雪中老猪図》
その孤独や侘しさは、年老いた動物だと尚更。しみじみしたものがある。
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最後に面白かったのが、櫻谷の鹿比べ。

《双鹿図》明治30年代 画像なし
緻密な毛描きがなされている。

《雪中孤鹿》明治30年代末頃
「円山派行書体」粗放な毛描き。鹿の孤独感がただよう。
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《秋野孤鹿》大正7年頃
「円山派草書体」毛描きはなされず、四条派的。鹿の白い尻と秋草が描く弧線に詩情、振り返る横顔に鹿の寂しき心情を見る。
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絵画の「真・行・草」、みなさんはどれがお好みでしょうか?



5月12日まで


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