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2024年02月20日12:10

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2/18 本阿弥光悦の大宇宙@東京国立博物館平成館

東博へは今月2回目。
長蛇の列は前回見た「中尊寺金色堂展」20分待ちらしい。
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いつものソフトクリーム。この日の気温19度。
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テレビで盛んに特集番組が組まれているらしいが、暇なく見ていない。こういう展示こそ予習が必要なのだが(汗)
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この日の朝も「日曜美術館」で紹介されていたので心配だったが思ったほど混んではいなかった。滞留するのは最初の方だけ。一番素晴らしかった書と茶碗のコーナーはまったくストレスなく見られた。

驚いたのは、コミュで知り合ったマイミクさんにばったりあったこと。彼は歴史にも詳しいし、細かいところを丹念に見ているから、見過ごしてしまいそうな所を教えてもらい、ラッキー。こういう邂逅は面白いね。

写真撮影は全面不可。平成館のロッカーは余裕。章構成が上手で最後まで気を抜けない見せ方で2時間息もつかず。さらには、作品自体が光悦の審美眼が半端ないため素晴らしく、素養がない私でも十分感動を得る書や茶碗ばかりだった。

https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2617

https://koetsu2024.jp/
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本阿弥光悦(ほんあみこうえつ・1558〜1637)は戦乱の時代に生き、さまざまな造形にかかわり、革新的で傑出した品々を生み出しました。それらは後代の日本文化に大きな影響を与えています。しかし光悦の世界は大宇宙(マクロコスモス)のごとく深淵で、その全体像をたどることは容易ではありません。
そこでこの展覧会では、光悦自身の手による書や作陶にあらわれた内面世界と、同じ信仰のもとに参集した工匠たちがかかわった蒔絵など同時代の社会状況に応答した造形とを結び付ける糸として、本阿弥家の信仰とともに、当時の法華町衆の社会についても注目します。造形の世界の最新研究と信仰のあり様とを照らしあわせることで、総合的に光悦を見通そうとするものです。
「一生涯へつらい候事至てきらひの人」で「異風者」(『本阿弥行状記』)といわれた光悦が、篤い信仰のもと確固とした精神に裏打ちされた美意識によって作り上げた諸芸の優品の数々は、現代において私たちの目にどのように映るのか。本展を通じて紹介いたします。


入るとすぐに人だかり、国宝《舟橋蒔絵硯箱》だ。
最近も見ているので軽くパスして入場。蒔絵の章で、この傑作が生まれた過程が朧げにわかる仕組み。
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第1章 本阿弥家の家職と法華信仰ー光悦芸術の源泉


伝本阿弥光甫作《本阿弥光悦坐像》
福耳の好々爺という感じ。本展の最後は、神坂雪佳筆・富岡鉄斎賛の肖像で締めくくられている。神坂雪佳といえば、明治琳派の継承者だ。
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《「光悦」印・「光悦」印影》
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本阿弥家は、刀剣三事(研磨、浄拭〈ぬぐい〉、鑑定)を家職とする室町以来の名門一族で、光悦も家業に携わり、審美眼を培ったと推測される。

最初に、家系図、家伝、折紙などの資料や、名物の刀剣が並ぶ。混んでいるし、刀剣はよくわからないので先を急ぐ。
ただ、《短刀 銘兼氏 金象嵌 花形見》は、光悦の唯一の指料とのことで、その拵は朱漆塗りに金蒔絵で「忍ぶ草」をあらわした華麗なもので、足を止める。
謡曲「花筐」に由来するらしいが、「花がたみ」というと上村松園の狂女の絵を思い出す。

この章でもうひとつ重要なのは、光悦が日蓮法華宗の熱心な信徒だったこと。
そして、すごく驚いたのが
《扁額「正中山」「妙法花経寺」》
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なんと私が外猫撮影に何年も通い続けていた、下総中山の法華経寺の扁額を書いたのが光悦だったこと!オカアサンやパンダという猫がいた「祖師堂」もまた光悦の筆。そういえばこのような字だったなぁ、と光悦をぐんと身近に感じる。

《紫紙金字法華経幷開結》
これは小野道風が写経したといわれているもの。十巻一具完備。紫紙は少し色褪せているように見えたが、金字はくっきりキラキラ。
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この経を納めて菩提寺の本法寺に寄進した《花唐草文螺鈿経箱》は光悦関与の漆芸として唯一の基準作で、第2章に展示がある。光悦蒔絵のイメージではないけれど、螺鈿の模様が可愛らしい。
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第2章 謡本と光悦蒔絵ー炸裂する言葉とかたち

色紙:本阿弥光悦筆 屏風:伝俵屋宗達筆《桜山吹図屏風》
色紙には古今和歌集の歌が書かれているが、色紙には雲母摺が施されている。
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雲母摺は当時の流行だったらしく、《光悦謡本》の特製本、上製本などの表紙や本文の料紙に摺られている。光悦謡本というのは、光悦流の書体で書かれているから。少し角度を変えるだけで浮き上がってくるから、相当ふんだんに使っているに違いない。豪華だ。

《芦舟蒔絵硯箱》
和歌や物語などをモチーフとすること、大胆なデザインであること、繊細な蒔絵と厚い鉛板を合わせること、角が丸いことが光悦蒔絵の特徴と思われるが、本展に展示されている蒔絵箱は、光悦がどの程度関与したかはまだわかっていないらしい。
が、おしゃれでかっこいいことは確かだ。この時代、光悦風蒔絵箱、光悦流書体謡本が爆発的に人気だったことが窺える。
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《忍蒔絵硯箱》
蓋表に「たれゆへに」の文字を鉛金貝ではめ込み、忍草の蒔絵装飾がほどこされている。こういうのが、無知な私泣かせ。帰宅後調べる。
「みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに 乱れそめにし われならなくに  河原左大臣」
「もぢずり」とは、現在の福島県信夫地方で作られていた、乱れ模様の摺り衣のことだそう。ふむ。
「光悦形」(追随作)なのか、あるいはそのオリジナルと言えるのか不明。和歌の一部の文字を鉛で散らし書きは《舟橋蒔絵硯箱》と共通。
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《扇面鳥兜蒔絵料紙箱》
蒔絵箱の中で「妄想お持ち帰り」はこれかな。斬新なデザインもさることながら、大きく使った貝の美しいこと、そして扇の骨の切金との対比が見事。蓋を開けると、画像ではわかりづらいが、天幕を止める紐(輪っか)が螺鈿でキラキラ光り、とても綺麗なのですよ。
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第3章 光悦の筆線と字姿ー二次元空間の妙技

スタイリッシュな料紙に和歌を書いた和歌巻から、張り詰めた筆致が信仰心を感じさせる日蓮法華宗関係の書写、中風を患って震える文字で書いた書や晩年達観したか、それを「ゆらぎ」に変えた書まで多彩な作品が一堂に会している。

変体仮名があまりにも読めなさすぎて情けないのだが、読めなくても見ていて感動するのは、光悦の場合、文字=情報でなくて、文字=かたちだからなのだろう。
肥瘦を際立たせた筆線の抑揚、下絵に呼応した散らし書きはまるで音楽のようだ。ながら見した「日曜美術館」で、光悦の文字は「命毛(筆の穂の一番長い毛)」の入りが素晴らしいと言っていたが、なるほど、そういった妙があるのね。

本阿弥光悦書 俵屋宗達下絵《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》
なんとこれが一巻端から端までずずいーっと展示!俵屋宗達が金銀泥で飛び渡る鶴の群れを描いた料紙に、光悦が三十六歌仙の和歌を書いた一巻で、長さ13m超。全ていっぺんに見るのはもちろん初めてだ。鶴の一群が飛び立つところから始まり、下降上昇繰り返して対岸に降り立つまでをアニメのコマ送りのように描いていて、今まではどうしても下絵の方に目が向きがちだったが、和歌の書き出しの位置や行間の取り方、筆の肥瘦、文字の大きさが、うまい具合に絵とコラボしている。マイミクさんに教えてもらったところは、文字の上から絵を描いた箇所。あらかじめ用意された絵の上に文字を書いたのではなく、光悦と宗達がまさしくコラボした証だ。これは楽しいに決まっている。2度並んでみる。
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《蓮下絵百人一首和歌巻断簡》
これも宗達の下絵ではないかと言われている。断簡が前後期合わせて6点展示されるが、元は25m以上もの巻物であったらしい。断簡に分断されたのはいつとは明らかではないが、遅くとも明治半ば。100首のうち57首を持っていたのが大倉喜八郎で、その全てが関東大震災で焼失したという。ううむ、残念。
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それで思い出したのが《鹿下絵新古今和歌巻断簡》だ。こちらも元は、28首を散らし書きにした20mあまりの巻物。断簡が、山種美術館、サントリー美術館、五島美術館、MOA美術館などにあったなぁ、と。断簡軸装も悪くはないが、巻物の形で絵と書の奏を見たかったと思う。今回は展示なし。

また、行書と草書を織り交ぜて書写した《法華題目抄》や、硬い楷書から柔らかな字へと同じ巻の中で変化していく《如説修行抄》などの日蓮法華宗関係の書は、これまでの常識を打ち破ったもので、信仰の心のままに筆を運ぶ光悦の人となりを感じさせる。

光悦は寛永三筆の1人(あと2人は近衛信尹、松花堂昭乗)だそうだか、書をなさっている方にはたまらない章だったと思う。


第4章 光悦茶碗ー土の刀剣

第3章でおおかた満足したら、とんでもない展示が最後にあった!光悦作の茶碗である。

光悦の陶芸の師匠は古田織部、元和元年(1615)鷹峯の地を拝領した頃より、樂家2代・常慶とその子道入との交遊のなかで茶碗制作を本格的に行なったらしい。「鷹峯の地を拝領」というと聞こえは良いが、この地は追剝も辻斬りもでる物騒な田舎。でも、光悦はその豊かな人脈でここに「光悦芸術村」を作ってしまった。そこが単なるアーティストとの違い、アート・コーディネイター、アート・プロデューサーでもあるわけで。すごいなぁ。当然人徳があったのだろうと、肖像のニコニコ顔を思い出す。

展示は、全て単独ケースで360度から見られる。長次郎や道入の楽茶碗も並べられ、比較できるようになっている。
コミュでは、国宝《白楽茶碗 不二山》がきていないのは残念とあったが、まだまだ茶碗がよくわからない私にはまずはこれで大満足。大胆な箆削りやひび、ざらざらとした土の感触そのままの、おおらかな造りがいい感じ。両手で包んでずっと持っていたいタイプのお茶碗だ。

《黒薬茶碗 銘時雨》初冬の静けさ。
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《黒楽茶碗 銘雨雲》
こちらは、荒々しい景色だ。比べると面白い
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《赤楽茶碗 銘弁財天》
胴の下3分の2くらいのところに横に強く箆跡が入り、そこから少し口が開いている。絶妙な変化ある作陶。
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《白楽茶碗 銘冠雪》
下の方がうっすら緑色…美しい!
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《赤楽茶碗 銘乙御前》
乙御前とはおたふくのこと。私は一番気に入ったのはこれかな。なんというか、明るくて愛らしい、楽しくなる茶碗だ。
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《赤楽兎文香合》
可愛い絵にまどわされがちだが、箆で荒く大胆に削ってある。一気呵成に作るのかな。松平不昧、原三溪の旧蔵品。
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3月10日まで

多少疲れて他の展示は見ずに帰宅。
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