内藤洋子『その人は昔』

『その人は昔』(67) 監督:松山善三
舟木一夫と内藤洋子コンビの第一作だ。舟木は勿論だが、内藤もソロ曲「雨の日には」デュエット曲「白馬のルンナ」「恋のホロッポ」「こんどの日曜日」と四曲を劇中で歌う。彼女の歌が聴ける映画はたぶん本作だけなので、貴重なフィルムと言える。円盤化ありがとう。
ミュージカルのように唐突に歌い出すわけではなく、背景に歌が流れる。オープニングで歌う「ルンナ」と「ホロッポ」はレコードを持っていた。どちらも可愛らしい歌だ。今でも覚えている人は多いだろう。

二人は北海道の田舎で働いている。内藤が野良着姿で昆布を取るのがかわいい。二人とも吹き替え無しで馬に乗っている。内藤洋子は乗馬が得意だったらしい。さすが本物のお嬢さんだ。
仲良く幸福そうに見えるが、二人とも希望のない毎日に嫌気が差しており、東京へと向かう。都会の喧騒の中で愛情は摩滅していき、やがて悲劇が起こる。結末が予測できず、緊迫したストーリーだ。

内藤の歌と悲恋の痛ましさが印象に残る。★★★★