東宝も松本清張作品を映画化している。短編集「黒い画集」を元にした映画が三本ある。
『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(60)
監督:堀川弘道
中堅企業課長の石野(小林桂樹)は、部下の節子(原知佐子)を愛人にしている。ある日、節子のアパートの近くで隣人に出会った。隣人は殺人容疑をかけられ、石野と会ったことが有力なアリバイとなる。だが、証言すると愛人の存在が妻に知られてしまう。
日常に潜む罠といういかにも清張らしい短編を上手く膨らませて、見事なサスペンス映画に仕上げた。右往左往する小人物の心情が痛いほど共感できる。小さなつまづきが切っ掛けで、雪ダルマのように不運が重なっていく。いま見てもリアルに怖い。ヒットしたはずだな。
愛人役の原知佐子は、細身で中性的な美少年を思わせる女優だ。実相寺昭雄の奥さんになったらしい。★★★★★
『黒い画集 第二話 寒流』(61) 監督:鈴木英夫
銀行員・沖野(池部良)は、融資をきっかけに料亭の女将(新珠三千代)と良い仲になるが、上司の桑野(平田昭彦)も彼女を狙っているようだ。
登場人物は、ほぼこの三人だけ。捻りの無い三角関係とサラリーマン残酷劇である。凡作だ。「証言」のヒットでシリーズ化したのだろうが、二匹目のドジョウはいなかったか。平田昭彦が出ずっぱりなのは嬉しい。ダンディな平田はスケベ野郎には見えないが、冷酷な悪人には似合っている。★★★
「黒い画集」はもう一本あるけど、明日にします。
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