読書で悩む/「あなたが誰かを殺した」

映画が一段落したので、読書を進めたい。が、問題が生じた。吉村昭読破計画の掉尾を飾る「ふぉん・しいほるとの娘」は、吉村長編の中でも最長で文庫上下1400ページ近い。取りかかったところで、愛読作家の新刊が続々と現れた。先に読みかけを片付けようとも思ったが、どうにも気になるので中断して新刊を先に読むことにした。

・あなたが誰かを殺した 作:東野圭吾
別荘地のパーティーが開かれた夜、殺人鬼の乱入によって惨劇の幕が開く。五人死亡一人負傷の惨事のあと、レストランに現れた男が犯行を自供する。男は死刑になりたくてやったと言ったきり、黙秘を続ける。
遺族たちは休暇中の加賀恭一郎を交えて、検証会を開くことにした。進行と共に意外な事実が判明する。

久々の大ヒットだ。加賀さんだけでなくガリレオもマスカレードも天才少女も最近作は冴えなかったけど、今回は満足の出来栄えだった。
無差別大量殺人で犯人は自供しているという異様な発端だが、内容はしっかり本格ミステリーである。無関係な人を死刑になりたくて殺す。昭和のころなら「いい加減なこと書くな」と叱られそうな動機だけど、今は現実にあるからねえ。
四組の富裕層家族には複雑で生臭い因縁があり、中盤のストーリーを盛り上げる。CM に出てくるような爽やか家族なんて現実には存在しない。終盤の謎解きは意外性抜群である。奇妙なタイトルの意味は最後にわかる。
東野ミステリーを堪能した。このまま復調してくれることを願う。★★★★★