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2023年09月29日16:08

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9/27 うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈展@東京都美術館ギャラリーABC

チラシをもらった時から、絶対面白いだろう!と確信していた展覧会。気づけば会期終了が近い。夫の休みを待たずに一人で行く。
特別展は「永遠の都ローマ展」その前は「マティス展」だった。

感は大当たり、実に面白い展覧会だった。
ちょっと変で、ちょっと可愛く、ちょっと不気味な、子供の頃に夢に出てきたものたち、起きてからも1日ぼーっとその夢のことを考えて過ごしたあの感覚、異国風でありながら自分の記憶の底にあるような郷愁を誘う風景、土地や空気、歴史に大きく包まれながら営む小さな小さな私たちヒトの愛おしさ、ポッと灯る色とりどりの小さな灯りやアメーバのように蠢く光り、、、会期残り少ないが、ぜひ体験してほしい展覧会です。

https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_tamanaaraki.html
https://www.tobikan.jp/hajimarihajimari/
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こどもから大人まで楽しめる、ちょっと怖くて懐かしい展覧会の「はじまり、はじまり」!
本展出品作家である荒木珠奈(1970年-)は、へんてこなかわいらしさとゾクッとする感覚が混ざり合った世界観が魅力の作家です。光と影、昔話、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフを用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や感情、記憶を揺さぶりながら、日常を越えた非日常の世界へと誘う作品を数多く発表してきました。
本展では、これまでに発表された詩情豊かな版画や参加型インスタレーションに加えて、本展のために新しく、開催地である「上野の記憶」に着想を得た大型のインスタレーション作品を制作。美術館の地下空間に、日常と非日常の境界を行き来するような不思議な体験を作り上げます。物語性あふれる作品がもたらす鑑賞体験を通じて、一人ひとりの日々の暮らしのかけがえのなさを見つめます。
会期中には、幅広い年齢を対象に、作家による造形ワークショップやアート・コミュニケータとの鑑賞プログラムなどを多数実施します。
この夏、東京都美術館の地下空間で、まるで絵本を1ページずつめくっていくように、日常と非日常の境界を行き来する不思議な旅をしてみませんか?


1章 旅の「はじまり、はじまり!」
エスカレーターを降りると、額縁の古い 箱。ネジを巻くと小さな音でオルゴールが流れる。旅のはじまり…
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メキシコ留学の経験などで制作された版画作品が並ぶ。先日東博で「古代メキシコ展」を見たせいか、独自の死生観をもつ異国を感じる。
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《Caos poetico(詩的な混沌)》
電柱から無断で電線を引き、家や屋台の灯りに使用していたというメキシコ人のたくましい暮らしぶりを、優しい眼差しで捉え、こんなふうにリリカルに。家に見立てた箱はメキシコの空き箱。色とりどりのランプがかわいい。自分で、空いているソケットにつけることもできる。ポッと灯りが灯る。昔、香港でも見たなぁ、勝手に電気を引く掘立て小屋。
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2章 柔らかな灯りに潜む闇

《うち》
荒木が幼い頃に住んでいた団地に着想を得て制作したという《うち》は、壁に設置された約100個の箱ひとつひとつが家になっており、鑑賞者が扉を開けることでそれぞれの家の暮らしが見えてくる作品だ。
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サポーター?(制服を着た監視員ではない人)が、鍵を渡してくれるので、その番号の部屋を探して開ける。
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「開いている部屋を閉めてはいけないんですか?」と聞いたら「基本的には開けていただくことにしていますが、お一人の青年が『どうしても閉めたい部屋がある』というので閉めていただきました」その部屋を開けて見せたいただいたら、中で人が一人端っこで膝を抱えて俯いている〈うち〉だった。「そっとしておいてあげたい」、心優しい青年だったんですね…

《見えない》
こちらは「闇」だ。東北大震災の福島原発事故から、危険なものがせまってくるのに見えない恐怖心や嫌悪感を表現したのだという。これは竜舌蘭の繊維を黒く染めてできている。ホラー映画で、怪物が壁つたいにスライムのようにやってくるのを思い出す。
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3章 物語の世界、国境を越える蝶
レストラン、サーカスや劇場、物語、そしていきものたちが版画や造形でとても優しい眼差しで作られている。可愛らしいけれど、ちょっと物悲しさも。
《牛レストラン》
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《人形の劇場》
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《Aurora theater》
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《愛づる》
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《最後の1匹》
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《永久凍土が溶けぬように》
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《本の中の劇場》
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《遠野物語》
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《満ちる》
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《一番最初に道なき道を歩いて行った人の 詩:小松未季》
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荒木氏自身人形劇ビデオも絵本の挿絵も制作している。
《迷惑なコヨーテ》
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《NeNe Solー末っ子の太陽ー挿絵》
「末っ子の太陽」の装丁試作版は、この間見た古代メキシコ文明のピラミッド装飾に似ている。
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《むかし、むかし…》
昨年、さまざまな国にルーツを持つこどもたちを対象に、紙づくりを体験しながら自分にルーツのある国の昔ばなしを紹介しあうワークショップを実施、紙を使っての羽の形を模したテントや絵本を作ったのがこちら。
これには荒木がメキシコで出会ったわたりを行う「モナルカ蝶」がモチーフとなっており、「蝶には国境がない」という自由さと移民の不自由な現状が重ね合わされている。また、テントは子供たちが安心できる場所として「避難所」のような意図が込められているという。
分厚いパルプでできた蝶の羽の表面にはたくさんの手形が付いていて、温もりを感じたし、私自身は優しく包み込んでくれる「繭」を想起した。
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余談:並べられた絵本の中に池田龍雄氏絵の「ないたあかおに」がありました。美術館コミュで話題になった画家と本。
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4章 うえののそこ(底)を巡る冒険
「旅の最後を締めくくるのは、ギャラリーAの空間全体に広がる新作のインスタレーションく記億のそこ>(2023年)です。開催地である「上野の記憶」に着想を得て制作されました。
中央には、上野の過去や未来、人びとの多様な営みを飲み込み、吐き出すとされる「中空のかご」が設置されています。かごに入り、その中に包み込まれて周囲を見渡すと、吊下げられた目玉のような丸い鏡に投影された街の映像がきらめき、光と影がまるで生きているように空間を飛び回ります。荒木は次のように語っています。「上野は、多くの歴史的な出来事が生まれた場所であり、多様な人びとの営みを受け入れてきました。その混沌に魅力を感じ、作品のテーマとしました。今、目に見えているものだけが存在しているのではなく、過去の出来事が、足元の下、地下に埋もれている。美術館の地下空間に広がる鑑賞体験を通じてその断片を感じ取ってもらいたいです」。

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これは言葉で説明することはあまりにも難しい。他の作品もそうだが、できる限り写真を撮ってきたのでアルバムを見ていただけたら、と思う。
アルバム↓
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000120864359&owner_id=2083345

おそらくこの展覧会企画はコロナ以前からあったものだろう、だとしたら、パンデミックで一度白紙に返ってしまった時の思いも込められているんじゃないか、緊急事態全減で人影が全くなくなってしまった上野の過去も中空のかごが飲み込んでくれたはず。そして、未来、、、ますます見通せなくなった未来だけれど。


10月9日まで

外はまだ夏のように暑かったけれど、雲は秋。
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