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2023年08月02日11:48

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7/25 ポール・ジャクレー〜フランス人が挑んだ新版画@太田記念美術館

新版画というと、川瀬巴水、小原古邨、吉田博、それから版元である渡邉庄三郎の名を思い出すが、同時に、千葉市美術館と横浜美術館の常設にある外国人絵師の版画も素晴らしかったとこを記憶している。
名前の記憶があやふやだったので調べてみたら、横浜美術館で見たのが、ポール・ジャクレーだった。

それは確かミクロネシアの風俗を描いたものだったが、西洋人が東洋に感じるエキゾチズムだけを打ち出す、つまりは「色眼鏡」で東洋を見る的なものがまるでなく、ただただ線と色が美しかったのを覚えている。

そのポール・ジャクレー展に会期末ギリギリに滑り込めた。本当は前期も行きたかったが、自分の写真展の前後であったため時間が取れずに残念だった。あと2日で終了というだけあってそこそこ混んでいたし、図録は売り切れ、気に入った絵のポスカもなかったのが残念。でも見に行かれてよかった。

http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/pauljacoulet
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フランス・パリに生まれたポール・ジャクレー(1896〜1960)は、3歳の時に来日し、64歳で亡くなるまで日本で暮らしました。昭和9年(1934)、38歳の頃から、南洋やアジアで暮らす人々を描いた木版画を続々と刊行します。昭和前期は、絵師、彫師、摺師の協同作業による「新版画」が盛んとなった時期でしたが、さまざまな国の老若男女が暮らす姿を鮮やかな色彩で描いたジャクレーの作品は、当時の新版画の中でも異彩を放っています。本展覧会では、ジャクレーが挑んだ新版画の全貌をご紹介いたします。

 ジャクレーは、池田輝方・蕉園夫妻に師事。池田夫妻は水野年方、水野は月岡芳年、芳年は歌川国芳に連なる。立派な浮世絵の系譜といえよう。

しかし、ジャクレーの決定的特徴はなんといっても、通常版元が絵師・彫師・摺師を主導して制作していたのに対し、自らが彫師と摺師を指揮して製作する「私家版」という形を用いた点だろう。

版元を挟まないことで、題材は「売れ線=美人画など」を求められることなく自由に選べること、採算を考えず上質な紙や絵具を使って手間暇をかけること、ができる。

実際、ジャクレーが好んで描いたのは、美人画ではなく、ミクロネシアや韓国、中国、日本の老若男女の姿であったし、摺を223回も重ねた精密で豪華鮮やかな作品、金やプラチナを用いて角度によって光り輝く作品を多く残している。
作品には、彫師と摺師の氏名も入れており、ジャクレーの彼らに対する敬意が感じられる。

販路も独特で、元々アメリカ人の愛好家がいたが、戦後はマッカーサーをはじめGHQに好評を博したそうだ。戦時中はフランス人ということで辛酸を舐めたこともあったようだが、3歳から亡くなる64歳までを日本で暮らした。

では、気に入った作品に中からいくつかご紹介。

《貝を持つファララップの女》
このポーズをこの角度から捉えることのインパクト、しかも女の強い眼差し。腕の刺青も美しい。
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《年下り、京城》(2画合成により部分)
青年が見つめている先は地を這う青虫。彼は、何を思っているのだろう。含蓄のある作品だ。
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《メナドの夕陽、セレベス》
夕焼け空の色表現を工夫。
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《西瓜、城北里》
「カッ」(つばあり)と「タンゴン」(つばなし)という帽子を被る2人。白い服は布目摺という細かい空摺になっている。
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《蝶、南洋》
4羽の蝶が鮮やか。ジャクレーは蝶のコレクターでもあった。
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《失恋、南洋》
自分を捨てた婚約者の名を鸚鵡に覚えさせ、自らを慰める女。美しいい配色。
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「満洲宮廷の王女たち」は、衣装の刺繍の美しさを再現するために、最多のものでは223回、最少のものでも83回摺りを重ねているという。

《金魚鉢》と《打ち明け話の相手》は前期展示で見られず
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《愛妾》これが最少113回の摺
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《貴賓席》これも相当細かい
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《眼鏡をかけた中国高官、満洲》
メガネは手で持っていてかけてはいないが。何がすごいって背景の壁紙。一見無地に見えるがよくよく見ると、花鳥吉祥図の線描。
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《ゴビの星、モンゴル女性》
袖の卍模様は、金とプラチナで摺ってあるので、光を当てると輝くそうだ。モンゴル王族のツインテールの髪型や装飾、衣装も素敵。
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《冬支度、釜山、韓国》
華やかな絵もあればこのような優しい色調の絵もいい。母娘が冬支度に布地を用意しているところ。右・母のブラウスの模様は空摺、白い髪飾りは未亡人を示しているという。
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《12月、日本》
外は雪景色、女は炬燵で背を丸めるの図…は、浮世絵では美人画であったが、ジャクレーは老婆でリアリティ。
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《身代わり、モンゴル》
亡くなった赤ちゃんの代わりにうさぎを抱く女。心打つ作品。
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《オウム貝、ヤップ島》
晩年の代表作。貝殻の水を飲む男。鮮やかで美しい色調。摺師曰く「ジャクレーの色数が多いのは構わないが、要求された色を出すのが難しい」
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《黒い蓮華、中国》
長キセルの女。シックな黒い衣装もまたエキゾチックだ。
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7月26日終了。

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