■形成作戦から反撃へ■
日本時間6月8日20時40分頃、ウクライナ国防省は述べていないが、欧州のメディアで烏軍が反撃を開始したようだと報じた。満を持して反撃をしやすくするための「形成作戦」から、反撃に移行したもようだ。
火器を使った戦争だけではない。
ロイターによれば、日本時間6月9日18時頃、相応がダムを決壊させたと非難し合っているが、ロシア軍がダムの破壊工作の際に用いた通信内容をウクライナ国防省のユーリ・サク顧問が傍受し、ロシア軍が関与した決定的な証拠としてテレグラムに投稿したとの事である。
先日はウクライナとの国境の町のラジオ局がハッキングされ、偽プーチン大統領の声で、
戒厳令が敷かれたと述べ、地域住民が大混乱を起こしている。
またハルキウ市の放送でも、ベルゴロド州民について、頻りに「ベルゴロド人民共和国民」と敢えてロシアと呼ばずにこのように親し気に呼ぶ事で、分離独立(寝返り)を誘引しようとしている。
他方、どこで撮影したかは定かではないが、ショイグ国防相がロシアのテレビに出て、反撃に出て来たウクライナ軍に応戦し、戦車30両を破壊したと発表した。衛星放送でNHKのBSでも6月9日、これは報じられていた。
このように火器ばかりではなく、烏ロ両国とも、プロパガンダ合戦も熾烈なものとなっている。
■ウクライナの戦術は南東部の支配地域を壊死させること■
昨年、セベロドネツクで大激戦となっていた頃、アメリカの戦争研究所(ISW)はウクライナにとって、ウクライナにとって、経済的、軍事的に見て、中長期的に重要なのは東部ではなく、ヘルソン、ハルキウ、ザポリージャであると述べた。
満を持した烏軍はその見解に基づくかのような動きをし始めた。
ハルキウと隣接するロシアのベルゴロド州はロシア西部の一大軍事基地がある。ここのグラトコフ州知事はシェベキノ市に460回もの砲撃が6月7日にあったとSNSに投稿している。自爆式ではない火器を装備したドローン(UAV)による砲撃も26回あったという。
更に親ウクライナ系の反政府組織が再度ベルゴロド州に侵入。ロシアの正規軍と小競り合いになり、こちらは一端ウクライナ領に退却している。この組織はウクライナ軍と水面下で連携し、ヒット・アンド・ランナウエイといった、ゲリラ的な戦術で揺さぶり、ベルゴロド州民に決起を促す積りのようだ。
またドネツク市、ルハンシク州ではイギリスから供与された、亜音速程度の速度ながら、超低空を飛行出来る、巡航ミサイル・ストームシャドーによる工業地帯、軍用地や石油基地への攻撃が頻発している。
更に長期戦の末、5月21日にバフムートの市街地から撤退した烏軍だが、北西部の貯水池と南西部からバフムートを再包囲すべく、こちらも進撃を続けている。
烏軍の大規模反攻として、
ザポリージャ→メリトポリ(注・地図)→ベルジャンシク
ドネツク→マリウポリ
に抜けるルートが方々で指摘されている。中でもウクライナから見て、特にメリトポリはロシアが占領したウクライナ東部南部の拠点となっており、ここが奪回されると、ロシアの東部とクリミア半島は壊死しかねない。
現にザポリージャ戦線で遂に欧州最強の戦車と目される、ドイツのレオパルト2が目撃され、進撃を続けている。
しかし残念だが一台が被弾したもようだ。
ここ一か月間、烏ロ戦争で最も激しい戦闘になるかもしれない。
最後に要衝バフムートで散々烏軍を手こずらせた、民間軍事会社・ワグネルの創始者にして社長のエフゲニー・プリコジン氏の現在の烏ロ戦争に関する発言をNewsweekから引用、要約して終わりにしたい。
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ウクライナ軍は既にロシアの防衛線を複数突破した。東部ドネツク州、バフムートに軍事拠点を形成している。我々はロシア国防省に20万人の兵員をワグネルに送るよう要求した。
ルハンシクとドネツクの前線に対応するには20万人はどうしても必要だ。派遣されれば、我々は戦う準備が出来ている。
バフムト近郊の3か所が問題だ。トレツクにはウクライナの大軍が押し寄せており、近いうちにクルディムフカとオザリアナフカに進軍を開始するだろう。現在ベルゴロド州は何とか持ち堪えている状態である。
ザポリージャでは最も重要な拠点を喪った。今後ドネツク州の北部と南部への攻撃が予想され、時間的な余裕がない。空爆では事態を収拾することは出来ないだろう。
ロシア軍にはきちんとした運営が行われておらず、計画も準備も、互いへの敬意もない。
上層部が癇癪を起こしているだけだ。我々は今後、重大な損失に直面することになると確信せざるを得ない。
その確信とは確実に、領土の一部を今のままでは喪う事になるという意味だ。
南部の前線はウクライナ軍による、反転攻勢の標的になる可能性が最も高い地域である。ここでロシア軍の防衛線が突破されれば、ウクライナ軍は更に南下し、メリトポリを解放し、アゾフ海沿岸に進軍し、クリミア半島とロシア本土を遮断することも出来る。
この状況は「破壊的な状況」である。
ノボドネツコエは既に陥落した。ここでもしロシア軍が5km〜8km後退するような事になれば、ウクライナ軍の進撃を制御することは最早出来ない。
ウクライナ軍が来れば、ここで暮らす住民の2人に1人は少なくともウクライナ軍に味方するだろう。
・・・つまり、烏軍がマリウポリ、ベルジャンスクに到達すれば、最早止める事は出来ないという事だ。
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最後まで御覧頂きまして、ありがとうございました。
(了)
写真:ワグネルの創始者・社長のエフゲニー・プリコジン氏
ザポリージャ戦線で目撃情報の多発のドイツのレオパルト2戦車
東ヨーロッパ最大のザポリージャ原発
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