『赤毛のアン』の物語が生まれた、カナダのプリンスエドワード島。本書は、ふんだんな写真で、島の風景や花々、アンの時代の暮らし、食べ物、ファッションなどを紹介する。グリーン·ゲイブルズ·ハウスのアンの部屋には、アンの洋服やカバン、更にはギルバートの頭をたたいて割れた石板まであり、今にもアンがふと帰ってきそうな佇まいを見せている。
「輝く湖水」「恋人の小径」ー何気ない湖や道も、アンのように名前をつけることで特別な存在になり、想像が広がってゆく。
『赤毛のアン』の翻訳者村岡花子の生涯を描いたNHKの連続テレビ小説『花子とアン』の再放送が今なされているが、戦時中の空襲の場面が印象に残っている。焼夷弾が降り注ぐ中、こわいよと泣く子どもたちに「花火みたいね。いい、想像してみて。これからみんなであの花火の中を走り抜けるの。怖くないでしょ。」と花子は言う。「想像力」は決して現実からの逃避ではなく、人生を豊かなものにするとともに、現実に立ち向かう術にもなるように思えた。
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