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2021年02月05日00:16

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本棚362『炉辺の風音』梨木香歩(毎日新聞社)

 八ヶ岳の山小屋での著者の日々の暮らしが丁寧に綴られる。様々な鳥や小動物、季節の草花に囲まれ、ゆっくりと流れてゆく豊かな時間。
 表題にもあるように、山小屋の暖炉に薪をくべ、火を起こす場面が多い。先日、横浜の三渓園に行った時、古民家に囲炉裏があったが、二度と同じ表情を見せない、千変する光の明滅はいくら見ても見飽きなかった。太古の人びとと同じように、焔を見つめていると、人と自然との繋がりが感じられて安らかな気持ちになる。下記の著者の言葉のように、人間も自然の一員として、自然の穏やかな連環の中で生きていくことで幸福になるのだろう。そしてそれは、必ずしも山の中で暮らさずとも、季節の移り変わりにそっと耳を澄ますことで実現できるのだとも思う。

「自分の書いた物語のなかに、少女が祖母に、「自分が死んだ後も世界は同じように回っている、それが怖い」というようなことをいう場面があった。これは私の幼い頃の恐怖だった。けれど今は、自分の死後も、鳥はどこかで囀っている、そのことに限りない安堵を覚える。昔された質問に、ようやく答えられるときが来たのだと思う。」
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