「あたしは最後の一枚が落ちるのを見たいの。もう待ち草臥れちゃった。考えるのも草臥れちゃった。何もかもみんな忘れて、あの草臥れた葉っぱみたいに、ひらひらと舞い落ちて行きたいの」
オー·ヘンリーの『最後の一葉』など「命」にまつわる三話が収められている。
オー·ヘンリーは様々な職を転々とし、銀行の横領事件に巻き込まれ服役し、妻も病気で失う。出所後は短編作家として人気を博すが、過度の飲酒で健康を損ない、経済的にも逼迫し、合併症で亡くなる。
人情味あふれ心温まる作品群とは対照的な苦難多き人生。『最後の一葉』で、病に冒された若きジョンシイのために、命を懸けて蔦の葉を描いたベアマン爺さんの姿が、著者に重なって見えた。
「芸術の女神の衣の裾に触れるところまでも行けなかった」画家のベアマンと、一時人気作家となった著者は異なるかも知れない。しかし、お酒の力を借りて生きて行かざるを得なかった点、何よりも、人に生きる力、甦る力をもたらす「傑作」をこの世に遺した点でふたりは共通している。
また、人生の辛酸を嘗め尽くしたクリスチーネが、今際の際の最後の2頁で救われる、ヴァッサーマンの『お守り』も、荒削りだが圧倒された。
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