・神々の糧(1904)作:ハーバード・ジョージ・ウェルズ
ヘラクレオフォービアという薬剤によって、あらゆる成長期の生物を巨大化することが可能だ。
雌鶏より大きいヒヨコを観察しているうちは良かったが、やがてイラクサのジャングルや犬より大きいネズミや巨大スズメバチが出現して、人々はパニックに陥る。前半三分の一くらいは安直なB級SFもどきだ。が、ウェルズ御大がそんなものを書くわけがない。発育不良の赤ん坊にこの薬を与えたため、深刻な社会問題が発生する。
中盤以降は巨人と人間社会の相克がテーマとなる。本作の巨人は「火星人」や「透明人間」のような一発アイデアのSFネタではなく、思想的あるいは哲学的な何かの象徴なのだろう。それはわかるが、巨人は脳まで巨大な超人なのか(たぶんそうらしい)とか、ディテールの書き込みが足りないため、中途半端な印象だ。奇想天外なストーリーはウェルズぽい。社会主義的な主張が入るところも、いかにもである。★★★
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