我が電気メス試作機は、先に書いた化け物:電源トランスの重さもあって、試作機の電子回路は、車輪付きのラックに組み込んだ。そのラックの大きさは、子供の本棚程度になった。
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先の日記に書いたように、試作機の効果は、クジラの生肉の塊で、一応の成果を得たのだが、果たして人間に使えるかどうかは不明だった。
そこで或る大学の医学部で、その効果を調べることになった。
私の電気メスの試作機は私一人で行っていた。
そもそも先に書いた『医療機器の安全性に関する研究』は、会社内の本来の業務ではなかったからだ。
だから、上記した医学部へ我が試作機を運ぶのは私自身がやらなければならなかった。
途中までは会社の車で運んだが、大学の医学部へは私一人で運んだ。
広い大学構内を、重い車輪付きラックを、ガラガラさせながら運ぶのは実に難儀だった。
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それはともかくとして、我が電気メス試作機の効果は、犬を使うとのことだった。
大学の医学部には実験用の各種の動物がいる。その中の一匹の犬を使うことになった。
その犬で実験するにあたって、その実験をして頂いた人は、著名な其の大学・医学部の教授だった。
その教授は実験する前に、犬を麻酔させた。麻酔が効いた犬の脚を用いて、切開、凝固の実験をした。
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その実験の成果を一応出し、実験は終わった。
しかし、実験に使った犬は、なかなか麻酔から醒めなかった。教授は、その犬の口に、自らの口をあて、息を吹きこんだ。
しかし其の犬は醒めず、結局、死んでしまった。
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私は今でも其の犬の姿を、ありありと思いだせる。少し茶色がかった、スラリとした成犬だった。
私は此の犬を思うとき、どうしようもない心の痛みを今も感じている。
たかが、私の試作機のために、一つの命を犠牲にしたことを私は恥じざるを得ない。
これは私の電気メス試作機体験で最も辛いことだった。
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