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2016年05月24日15:00

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ネットシネマ『火花』全10話試写会レビュー

★★★★☆
 朝10時から、休憩を挟み夜の9時まで、壮大な450分で1本を単純に10話で分けただけという構成の作品を通しで見てきました。普通の映画化なら120分程度で絞り込んで脚本を構成するのに、約4倍もの時間をかけて描くものだから、前半はなかなかストーリーの進展が遅くて、主人公の徳永が走っているシーンがやたら長くて辛かったです。
 5話になって、担当監督が『モヒカン故郷に帰る』の沖田監督の担当回から、芸人として成功していく徳永と、師匠としたう先輩芸人神谷の没落の落差が激しくなり俄然と面白くなりました。
 そして最後の第10話になって、廣木隆一総監督の人情味溢れる演出が泣かせてくれました。
 1話ごとのドラマ構成にはなっていないので、できれば全10話一気見でないと、たぶん4話あたりで挫折する可能性が高いと思います。"よし今日は朝からNetflixで『火花』を見よう"と覚悟を決めて、とにかく5話までいくまで我慢して見るのだと根性を決めて視聴しされることをお勧めします。

 原作出典の台詞も多く挿入されて、きっとまだ一度も『火花』を読んだことがないという人には、よき読破のきっかけを提供してくれることでしょう。

 本作だけでも、原作者又吉が『火花』に込めた想いがヒシヒシと伝わってきました。まず意外だったのは、タイトルから予想していた徳永と神谷との火花を散らす葛藤が描かれるドラマではなかったということ。むしろ内向的な徳永が、自由奔放な神谷に憧れて、その才能に嫉妬するというものでした。
 そもそも嫉妬心というのは、 朝10時から、休憩を挟み夜の9時まで、壮大な450分で1本の作品を、見てきました。さすがに、しんどかった(^^ゞ

 450分を単純に10話で分けただけという構成。普通の映画化なら120分程度で1本に絞り込んで脚本を構成するのに、約4倍もの時間をかけて描くものだから、前半はなかなかストーリーの進展が遅く、随所で挿入される主人公の徳永が走るシーンがやたら長く感じられて辛かったです。
 5話になって、担当監督が『モヒカン故郷に帰る』の沖田監督の担当回から、芸人として成功していく徳永と、師匠としたう先輩芸人神谷の没落の落差が激しくなり俄然と面白くなりました。
 そして最後の第10話になって、廣木隆一総監督の人情味溢れる演出が泣かせてくれました。

 1話ごとのドラマ構成にはなっていないので、できれば全10話一気見でないと、たぶん4話あたりで挫折する可能性が高いと思います。"よし今日は朝からNetflixで『火花』を見よう"と覚悟を決めて、とにかく5話までいくまで我慢して見るのだと根性を決めて視聴しされることをお勧めします。

 原作出典の台詞も多く挿入されて、きっとまだ一度も『火花』を読んだことがないという人には、よき読破のきっかけを提供してくれることでしょう。

 本作だけでも、原作者又吉が『火花』に込めた想いがヒシヒシと伝わってきました。まず意外だったのは、タイトルから予想していた徳永と神谷との火花を散らす葛藤が描かれるドラマではなかったということ。むしろ内向的な徳永が、自由奔放な神谷に憧れて、その才能に嫉妬するというものでした。
 そもそも嫉妬心というのは、世間一般では成功者に対して向けられるべきもの。しかし神谷は、あまりにも芸人としても人間としても、無軌道ぶりを貫いて、破綻していくのです。そんなダメ人間に嫉妬心を抱いたしまうというところが、原作の特異な点だろうと思います。
 例えば第1話の、熱海の花火大会で徳永のスパークスが出演するシーン。彼らのあとの出演者が、神谷のコンビ『あほんだら』でした。神谷は、なんと客や主催者を痛烈に罵倒して、舞台から引きずり下ろされてしまうのです。そんな非常識な芸を見たら、普通の芸人は、どん引きしてしまうことでしょう。しかし、徳永はそんな神谷を見て、しびれるくらい感動してしまうのです。そこがこの物語の全ての始まりでした。

 神谷の芸は、常識を越えた笑いの追及だったのです。そのためなら、人を徹底罵倒することも厭わないという、まさに舞台に火花を散らす、デンジャラスで傍若無人な芸風だったのです。
 そんな神谷に、芸人でありながら、内気で人と話すのがあまり得意でない徳永は、自分の理想を見いだしたのだろうと思います。
 実際、劇中での王道漫才と言える『スパークス』のネタよりも、毒気のある『あほんだら』のほうが遙かに面白かったのは事実。徳永が神谷に陶酔してしまうのも分かるような気がしました。
 その徳永と神谷の人間像で見えてくるのは、原作者のモチベーション。きっと、小心者の徳永はリアルな自分の分身であり、神谷はついつい日常に妥協を重ねている又吉のこうなりたいと願う、無いものねだりを投影したキャラなんだろうと思います。
 もう一つは、芸人の世界の厳しさ。この世界には、実力がありながらも日の目を見ずに消えていった芸人がたくさん存在します。それらの才能に対して、又吉は万感の思いで、惜別の思いを語りたかったのではないでしょうか。徳永と神谷のそれぞれの相方役として、映画初出演を果たした「とろサーモン」のふたりも、試写会で同様なことを言ってました。まだ売れているとは言えない「とろサーモン」ですが、演技も素晴らしいし、試写会での客いじりも抜群に面白いのです。こんな才能がなかなか芽生えることがないなんて、なんて厳しい世界なんでしょうか。そんな運命の残酷さも後編では克明に描かれていきました。

 徳永と神谷の関係は、神谷が没落するのと同時に、徳永のスパークスが売れ出してからも続きます。大切な番組初出演の打ち合わせすらも、神谷から電話がかかるだけで、トンズラしてしまうほど神谷に共依存してしまっていた徳永。このふたりの異常な関係性は、 子役時代から演技力に定評のあった林遣都が演じたからこそ、嘘くさく見ることができたのだと思います。

 あくまで尊敬する先輩芸人として、神谷を立てようとする徳永。見どころは、そんな彼が思わずため口をはいてしまうシーンでした。一発目は、落ち目の神谷が、スパークスの人気にあやかろうと徳永の髪色を真似て銀色に染め上げてしまうところ。一切の模倣を否定してきた師匠の裏切りを、断じて徳永は売れ入れることができなかったのです。
 そしてもう一つは、神谷が自分の人気の一発逆転を狙って、あり得ない肉体改造してしまうことです。徳永は、そんな改造は、人権侵害になりかねないことがなんで分からないんですかと、泣き崩れながら神谷に喰ってかかるのでした。
 原作をお読みになった人は、きっと神谷がどんな格好で登場してくるのか、いろいろ想像したことでしょうけれど、かなりの精巧さでメーキャップしてきますから、乞うご期待!

 さらに、「スパークス」の解散ライブシーンも感動的。小心者という縛りを解き放った徳永は、突然「スパークス」として用意してきたネタを放棄。「常識を逆転させた漫才」を披露します。それは、師匠の神谷そっくりの観客に向かって「死ね」を連呼し、上から目線で、解散に向けた悲しい気持ちとは全く逆の気持ちをぶつけるものでした。
 林遣都が明かすのは、このとき出演者もスタッフもエキストラの観客もガチでボロなきだったと言うことです。初出演で絶対に泣けないとこぼしていた相方山下役のとろサーモン好井まさおも全く問題なくボロなき。特に、観客席で二人の最後を見届けていた神谷が流す万感の思いを込めた涙には、グッときました。
 神谷の相方に扮したとろサーモン村田に言わせれば、「芸人にとってはリアル過ぎるシーンがたくさんある」と言う本作。芝居とはいえ、身につつまされるシーンだったのだろうと思います。

 加えて、徳永の元バイト仲間でスタイリストを目指しているあゆみが、キャリアを積むため海外留学に出発するとき、陸橋に駆け上がって、ずっとあゆみの乗ったタクシーに手を振り続ける徳永がいじらしかったです。海外に行ってしまう前に、なんでひと言自分の素直な気持ちを打ち明けられなかったのでしょうね。そんななところにも、又吉の徳永に対する自嘲的な投影ぶりが際だっていると思えるシーンでした。

 演技面では、林遣都の演技は良かったのですが、それよりも神谷を演じた波岡一喜が素晴らしかったです。神谷ならではの危ない雰囲気とそれでいて、憎めない性格として人間味溢れる無軌道さを存在感たっぷりに演じてくれました。
 実は、この二人漫才に関しては、全くの素人だったのです。本作で初めて漫才師役に挑んだ林は、試写会で「ひたすら練習した」と振り返り、「最高のパートナーであり、僕の師匠。一緒に残せて誇りです」と相方を演じた好井に感謝を述べていました。
 第1話からだんだん林が上手になっていく漫才シーンも注目すべきポイントでしょう。廣木総監督は、「普段テレビから流れてくる漫才に、負けちゃいかんと思って。勢いを大切にほぼ一発撮りだった」とこだわりを語っていました。

 但し、漫才ドラマなのに、肝心の漫才シーンで第5話と6話の沖田修一監督回を除いて全く笑いが出ないのです。もちろん劇中で出演している「スパークス」の漫才もいいテンポでネタを披露しているのですが、なぜか試写会では静まりかえっていました。品川ヒロシ監督の「漫才ギャング」では、佐藤隆太と上地雄輔の素人コンビが繰り出す、超高速の突っ込みの連発に、上映会場ではどこも大爆笑に包まれていたのとは対称的です。演じる林の問題よりも、演出をつける監督がどれだけお笑いに情熱を注ぎ込んでいるのか、パッションの問題なんだろうと思います。その点では、毎作品何気ない日常のなかに笑いを仕掛けてくれる沖田監督の演出力は、さすがだと感じました。

 但し、他の監督が悪かったわけでなく、本作に携わった5人の監督の個性の違いをそれぞれに感じさせてくれて楽しめました。
 第3話と4話の白石和彌は、引きのショットの多用で、情景描写に特色があったし、何よりも廣木総監督の担当回では、人間ドラマとしての情感が増して、しっとりとした間合いで、この現実と夢の狭間に揉まれた二人の若者の物語を、印象強く締めくくってくれたのです。

 なお、本作は6月3日からNetflixで配信開始されます。 


●Introduction
 処女作にして第153回芥川賞を受賞、累計発行部数251万部(2016年1月現在)という異例の大ヒットとなったお笑い芸人・ピース又吉直樹の著書「火花」が初の映像化。
 6月3日、全10話のNetflixオリジナルドラマとして日本を皮切りに全世界にストリーミング開始が決定。(各国順次配信予定)
 売れない芸人の先輩・後輩の日常と絆を描いたこの物語は、単なる“お笑い芸人の物語”でなく、成功を夢見る若者が、現実と夢の狭間で苦しみながらも、自分らしく生きる様を描く二人の若者の青春物語。

 今まで知ることがなかったエンターテイメントの世界の裏側で、苦悩する二人の姿は芸人という特別な世界だけではなく、何かを目指し、夢中になったことがある誰もが、今までに一度は感じた事がある感情が沸き上がります。

 総監督を務めるのは、映画『さよなら歌舞伎町』『ストロボ・エッジ』などを手掛けた廣木隆一。「文学的で、洗練された感じ」と原作を読んだ際に感じたという廣木監督は、原作の世界観を壊さず、文字の持つ表現や、風景・間・テンポなどの文体の行間をうまく映像で表現したい、と語る。

 1話と9話そして最終話の監督を務めながら、約450分に渡る1本の作品をつくるべく、各話全てが統一されたメッセージをもったエピソードになるよう細部に渡って、全ての監督ともに制作を進行中。Netflixオリジナルドラマ『火花』は、6月3日、全10話(約450分)の作品となって、世界各国にてストリーミングがいよいよ開始されます。

●あらすじ
売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会で、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い強く惹かれ、「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌であり、また人間味に富んだ人物。

「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、二人は頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を歩きまわりさまざまな人間と触れ合うのだったが、やがて二人の歩む道は決定的に異なっていく。

徳永は少しずつ売れていき、その一方で、神谷は少しずつ損なわれていくのだった。そしてある日、神谷は徳永をはじめ関わるすべての人々の前から借金を抱えたまま姿を消してしまう。神谷のいない日々を淡々と過ごす徳永。そして一年後、二人は再会するのだったが。

お笑いという賑々しい世界の周辺で生きる女性たちの姿や、芸人の世界の厳しさも描きながら、驚くべきストーリー展開を見せる芥川賞受賞作。

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