mixiユーザー(id:492091)

2016年05月12日15:49

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映画『帰ってきたヒトラー』試写会レビュー

★★★★★特選
 ドイツ国内で並みいるハリウッド大作やディズニー人気アニメ作品を押しのけて、ぶっちぎりの独走した作品だけに、ドイツ国民でなくとも、凄く面白かったです

 ただ、これは素直に笑えない作品でした。
 主演俳優が、ヒトラーそっくりなだけに、もしそっくりさんが登場したら劇中と同じように人気者となり、移民政策や経済政策を批判して現代にナチスを復興させるかもしれません。
 この映画は、ネット社会の今日だからこそ、ヒトラーのそっくりさんが無批判に拡散する現実性を鋭くついていると思います。
 しかも現代に生まれたヒトラーは、現代のドイツ全土を見聞して、ドイツ民族の誇りを失った軽薄な若者たちのカルチャーや低俗なテレビの娯楽番組を批判します。
 また、移民問題と失業問題を捉えて演説し、的確に民衆の心を掴んでいくのです。それを助長したのは、彼を単なるモノマネ芸人として、際物的に扱ったテレビ番組でした。
 彼のドイツ民族としてのプライドをくすぐる演説力の巧みさと、番組出演での人気がさらにネットで拡散されて、一躍国民の人気者になってしまうのです。冒頭の唐突にヒトラーが再誕する場面は奇天烈でも、その後の彼が支持を広げていく過程は、充分起こり得ることだけに、素直に笑えなくなりました。

 もちろんエンターティメントとしては、ヒトラーが現代に生まれて体験するハメになるカルチャーギャップが面白可笑しく描かれているのですが、笑っているうちに、劇中の視聴率が取れるものなら復活したヒトラーでもイチオシで扱ってしまうテレビ局の体質に深く考えさせられることでしょう。
 なので「笑うな危険」というキャッチは、凄く意味深で、的を得た表現だと思います。 独裁者すら、スターにしてしまうメディアのあり方と、独裁者を受け入れかねない今の世相を問題提起してもらえる作品です。
●INTRODUCTION
 ティムール・ヴェルメシュのベストセラー小説を実写化したコメディードラマ。独裁者アドルフ・ヒトラーが突如として現代に出現し、奇想天外かつ恐ろしい騒動を引き起こす。舞台を中心に活躍するオリヴァー・マスッチがヒトラーを演じ、「トレジャー・ハンターズ アインシュタインの秘宝を追え!」などのファビアン・ブッシュや『ビッケと神々の秘宝』などのクリストフ・マリア・ヘルプストらが脇を固める。21世紀の民衆が、知らず知らずのうちにヒトラーに扇動されていくさまに注目。

 ナチス・ドイツを率いて世界を震撼(しんかん)させた独裁者アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が、現代によみがえる。非常識なものまね芸人かコスプレ男だと人々に勘違いされる中、クビになった局への復帰をもくろむテレビマンにスカウトされてテレビに出演する。何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を、視聴者はヒトラー芸人としてもてはやす。戦争を体験した一人の老女が本物のヒトラーだと気付くが……。
[日本公開:2016年6月17日]

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