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2016年04月16日22:02

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ミク紀行の合間に野田昌宏と桐野夏生

ミクスポで遠征している間は基本的にミクのことしか考えないのだが、イベントが終了して寝るまでの数時間は暇になるので、けっこう読書した。忘れないうちに書いておきます。

・だから荒野(2013) 作:桐野夏生
二人の息子と夫の態度にうんざりした46歳の主婦・共美は、唐突にマイカーで家出する。
殺したいほど憎いわけではないが、平凡な生活の中に見え隠れする吝嗇や無関心や軽視が、積み重なって耐えられなくなる。庶民の不満とは、こういうものだ。上手い筆致だなあ。

夫のエゴイストぶりが腹ただしいが、彼が視点人物になる章では、それなりに共感できなくもない。まあ、みんな不満を抱えて生きてるってことですね。
共美の家出ドライブはスリリングで目が離せない。後半で大きな役割を果たすある人物が印象に残る。どんな結末を迎えるのか?と思わせて、意外と普通に着地する。桐野作品だから、もっとカオスで生臭い展開を期待したのだが。ちょっと不満。★★★

野田昌宏さんのエッセイを二冊読んだ。「キャプテンフューチャー」の訳文や各種解説でこの人の文章には親しんでいるが、まとまった本は「レモン月夜の宇宙船」以来だ。

・スペースオペラの書き方(88)
いちおうスペオペを書くための心得や技術論が書いてあるわけだが、単に読み物として楽しめる。稀代のSFコレクターにして黎明期を支えた名翻訳家のひとりが、「ドラマを作るとはどういうことか」を教えてくれる。テクストとして挙げるのが「水滸伝」と柴田錬三郎というところが、野田さんらしい。
たぶん主人公が四畳半に引きこもってアル中でドラッグ中、てな話が大嫌いなんだろうね。しっかり立てられたキャラが豪快痛快な活躍をするのがドラマだ、と言いたいのだろう。同感です。
四半世紀前に書かれた本だが、まったく古びていない。今でもラノベ作家や脚本家を目指す人には参考になるだろう。

「プロットとストーリーの違い」「主食(筋立て)とオカズ(アイデア)」などの表現はわかりやすく、読むときの参考にもなる。名著です。★★★★

・スペースオペラの読み方(94)
スペオペに限らず、代表的英米SFの手引書となっている。さすが元祖SFファンだけあって、作品の選択が適切きわまりない。最近SFファンに復帰して読みまくっているのだが、どうしても若いころ読み逃した50〜60年代の作品が中心となる。もっと新しいのも読むべきなのだろうが、80年以降に書かれた作品は、一部を除いてあまり食欲が湧かない。本書を読んで自分の判断が正しいことを確信した。SFの真髄というべき重要作は、この時期に集中しているのだ。

アシモフとの会見や老コレクターとの応酬などは抜群に面白い。若き日の伊藤典夫とのコレクション合戦などは爆笑ものだ。その反面ハインラインの葬儀に出席して「俺もそろそろ死に時か」とつぶやく場面は涙が出そうになった。どんな素晴らしい季節もいつかは終わる。
SFに惚れぬいて生涯をささげた、偉大なる大馬鹿者の半生記として読むのが正しいのかもしれない。★★★★★
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