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2015年02月17日22:32

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エロイだけどエロくない

先日取り上げたカンサスは70年代ロックを聴いてきた人ならば名前は聴いたことがあるだろうと思う。
しかしこちらはおそらく名前を知っている人は極めて少ないだろう。
日本では発音するのが憚られるバンド名である。
エロイ(Eloy)という。もちろんエロい音楽をやるバンドではない。
確かH.G.ウェルズの小説に出てくる種族の名前から取られたのではなかったかと思う。

70年代から80年代にかけて活躍したジャーマン・プログレに分類されるバンドである。
ジャーマン・プログレというと、サイケデリックや電子音楽といったクラウト・ロックとも呼ばれる先進的な音楽を思い浮かべる人が多いことと思う。エロイの音楽はそうしたクラウト・ロック勢とは一線を画し、シンフォニックなハード・ロックと呼ぶべきものであろう。
日本では著しく知名度が低く、果たして国内盤が出たことがあるのかどうか。

オルガンを主体にした浮遊感のあるハード・ロックに始まり、スペイシーなシンセを中心にしたプログレ風、華やかなシンフォニック・アレンジが施されたプログレ・ハード、といった具合にメンバーを刷新するごとに音楽性を変化させてきた。解散と再結成を何度か経て今でも現役である。
初期はユーライア・ヒープ、後期はカンサスやスティクスに喩えればイメージが掴めるだろうか。ピンク・フロイドからの影響も大きいようだ。
タイトでソリッドな演奏というわけでなく、どことなく緩さを感じさせるのが味でもあり、B級という評価に甘んじている原因でもあろう。カメレオンのように音楽性を変化させたのが災いしたのか、捉えどころのないバンドという印象なのだろう、ハード・ロック・ファンもプログレ・ファンもあまり積極的に取り上げようとはしないようだ。
ドイツ本国では人気バンドだったそうである。まあ、そうだろう。そうでなければ年に一作のペースでアルバムを作れるわけがない。
全作品CD化されているが、日本ではなかなか入手しにくいようだ。

私が初めて知ったのは新宿の輸入盤屋でたまたま見かけたからだった。
予備知識は全くなし。LP時代、今よりもずっと情報が少なく、ネットで簡単に視聴できるわけでもない。ファンタジックなジャケットから音を想像して買うことにしたのだが、これはギャンブルのようなものである。幸いなことにそれがアタリで、集めるようになったのだ。
それが『Colours』というアルバム。実はプログレ・ファンがそっぽを向き始めるきっかけとなったアルバムである。私は別にプログレにこだわりがあるわけではなかったので全く問題なかった。だいたいプログレなんてものに明確な定義があるわけではない。あるとすれば個人によって違う。なのでプログレ好きが集まって話をすると噛み合わなくなることが少なくない。そしてプログレオタクは自分が認めなかったものを徹底的にこき下ろすという悪癖を持っている輩が少なくない。まあ、これはプログレに限らず、クラシックでもジャズでもアイドルでも同じなのだが。

では、ここでジャケットとともに彼らのキャリアを振り返ることにする。
ドイツのバンドではあるが、歌詞は全て英語である。

事実上のデビュー・アルバム『Inside』(1973年)。
これ以前にマイナー・レーベルからセルフ・タイトルのアルバムを出しているが、多分に習作的な雰囲気が色濃い。
オルガン主体のハード・ロックでA面全てを使った18分ほどの長尺曲を含む。独特の浮遊感に英国産ロックにはない個性を感じる。オルガンが大活躍。
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『Floating』(1974年)。
前作を踏襲した作りだが、曲作りが格段に進歩している。決してタイトな演奏ではないのだが、音響的にはかなりへヴィだ。初期の傑作と言えよう。ここでもオルガンの活躍が目立つ。
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『Power And The Passion』(1975年)。
ギターを補強し、時間旅行をテーマにしたコンセプト・アルバム。プログレ志向はここから現れてきたようだ。『Mutiny』という名曲を含むが、全体としては過渡期の作品のような印象だ。
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『Dawn』(1976年)。
ここでフランク・ボルネマン(g,vo)以外のメンバーを刷新。
クラウス・ペーター・マツィオール(b)、デトレフ・シュミットヒェン(key)、ユルゲン・ローゼンタル(ds)を新たに招き入れる。
オーケストラを導入したストーリーものになっている。
ここからローゼンタルがコンセプト・メイカーあるいは作詞家として重要な役割を果たすことになる。ちなみに彼はエロイ参加以前はあのスコーピオンズに在籍していた。
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『Ocean』(1977年)。
アトランティス大陸をテーマにしたコンセプト・アルバムで、これを最高傑作と見る向きが多いようだ。
全4曲という大作志向でエロイ流スペイシーなシンフォニック・ロックの完成形であろう。
手数の多いベースとドラムスが見事。ジャケットも素晴らしい。
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『Live!』(1978年)。
LP2枚組のライヴ・アルバム。『Dawn』『Ocean』2枚のアルバムの曲を中心に演奏されている。
原曲通りナレーションも含まれていて、そのあたりはやや冗長に感じるが、よくできたライヴ・アルバムだと思う。ただ、キーボードがやや雑に感じられる部分もある。
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『Silent Cries And Mighty Echoes』(1979年)。
音楽的にも大作志向も前作を踏襲。アルバム通してのストーリーはないようだ。
メロディがポップになっている。さらにピンク・フロイドからの影響の大きさを感じる。
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ここでボルネマンとマツィオール残しメンバーを一新。
ハンス・フォルベルト(key)、ハンス・アルコナ(key,g)、ジム・マクギリヴレイ(ds,fl)を招く。ちなみに、マクギリヴレイは後にメタリカのアルバム『RELOAD』の中の収録曲でパーカッションを演奏している人と同じだと思われる。

『Colours』(1980年)。
私が初めてエロイと出会ったのがこのアルバムである。
シンセサイザーを核にした華麗なキーボード・アンサンブルを前面に押し出している。音が非常にカラフルだ。アメリカのプログレ・ハードに近い音と言えよう。先ほどカンサスやスティクスを引き合いに出したが、もしかしたらエイジアにいちばん近いのかもしれない。
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『Planets』(1981年)。
スペース・ファンタジーのようなストーリーの前半。
前作よりファンタジックな色合いが強くなり、世界観はジャケットそのものとも言える。なにゆえプログレ・ファンがそっぽを向いてしまったのか理解に苦しむ。女声コーラスとストリングスを効果的に配している。
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『Time To Turn』(1982年)。
二部作の後半。ここでドラマーが初期メンバーのフリッツ・ランドウに交代している。
リズムはよりシンプルにタイトになった。そのせいかハード・ロック色がやや強めになっている。相変わらず色彩感豊かなサウンドであるが、音がやや薄くなっている印象も受ける。
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『Performance』(1983年)。
モダンな響きを取り入れた充実作。キーボードの音色が明るくなっている。それでも情緒的なメロディーは健在で、何やら得体の知れないものを含んでいそうな雰囲気を醸し出している。もはやハード・ロックとも言えず、プログレとも言えない。
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『Metromania』(1984年)。
時代を睨んでか、メタリックな要素が強くなる。前作で押し出した近未来的なサウンドとうまく溶け合っている。従来通り長尺曲もあって聴き応えがある。ドラムの音が人工的なのが気になる。
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この後サントラを作り、ボルネマン以外が抜け、事実上彼のソロ・プロジェクトとなってしまったようだ。
90年代中ごろにはベーシストのマツィオールが復帰し、緩やかながら今でも現役として活動している。
なお、ボルネマンは実はドイツの音楽シーンではプロデューサー&エンジニアとして著名な人物らしく、ジャーマン・メタルの仕掛けにも一役買っていたようである。

クラウス・ペーター・マツィオールのベースは素晴らしい。リード・ベースっぽい動きで、推進力がある。
ドラマーも腕達者を揃えているが、中でもユルゲン・ローゼンタルの手数の多いド派手なドラミングは聴き応えがある。
『Colours』以降の華やかなキーボード・アンサンブルも非常に優れたものである。

本国以外では冷遇されているエロイだが、プログレ好きが多い日本でもほとんど無視されている。
先日話題にしたカンサスと似たような状況である。カンサスの場合はアメリカのバンドなので日本でも知名度はそこそこあるし、熱心なファンも少なくはない。ただ、ドイツは日本から見ればロック辺境の地である。英国プログレを聴き尽した後にプログレ・バンドを求める者が目を向けるのはまずイタリアだったのだ。
英米で取り上げられないと日本では注目されないというのもあるが、そもそも英米以外の情報が入って来にくかったというのもあるだろう。

ドイツというとクラウト・ロック。そしてジャーマン・メタル。
しかしそれ以外にも魅力的な音楽はたくさんある。紹介されることは少ないが、ドイツの音楽シーンは層が厚かったことを認識する。
そう、ジャーマン・ロックはタンジェリン・ドリームやクラフトワークやハロウィンだけではないのである。

国内盤高音質CDで紙ジャケバージョンで出ないだろうか…。
たぶん出ないだろうな。
日本は結構マニアックなものまで出ているのだが、きっと出ないだろうな。
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