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2015年02月02日09:18

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フォルムの実際 19世紀 モネ編3

フォルムの実際 19世紀 モネ編3
 画像は、1860年代のモネの作品、左から年代順に並べてみた。左の作品、1865年の作品、とてもモネの作品とは思えないような暗い作品だ。モネは、20代で、このような風景画を描いており、印象派の芽生えはあまり見えないものの風景画家としては非常に卓越したセンスの持ち主だったと言える。技法がどうのこうの、スタイルがどうのこうの言う前に絵になっているのだ。実は、この絵になると言う感覚が1つの器を示しており、モネの場合、ゴヤのように未完成がゆえに成長するというタイプではなく、それぞれの段階で完成度をみせながら、さらにレベルを上げて行く成長過程を取っていく。中が、1867年の作品、画面が明るくなってきている。左の絵画は、古典絵画の影響がまだ強く残っているが、中の作品になると、かなり変わってきている。画面を明るくするために色にホワイトを入れるようになる。ホワイトを入れると明度は上がり画面は明るくなるのだが彩度が落ち、グレー化していく。実際モネはグレーを多用している。画面を明るくするためにグレーを多用するのは良く有る手法だ。このレベルでも普通の画家なら完成レベルだろうが、モネは満足しない。筆致もまだ、もっさりした印象だ。ちょっとゴッホの絵画のような雰囲気も感じさせる。モネの絵画は、1870年代に向けてどんどん変わっていく。右の作品は、1868年、やや印象派風の雰囲気がでてきている。画面が全体的に明るくなり、色が多彩になってきている。しかし、やはりホワイトを色に混ぜて明度を出しているため、色の彩度がどうしても落ちてしまう。考えてみて欲しい、画面は明るくしたい、明度を上げたいが、色の彩度も落としたくない。どうしたらいいのだろうか。油絵の具は明度が低いため、そのまま使うと明度が下がり、どうしても画面が暗くなってしまう。かと言って、ホワイトを絵の具に混ぜたら彩度が下がる。この作品でも、カギになっているのはグレーだ。モネとグレー。一見交わり難いイメージだが、モネは巧みにグレーを使いこなす。モネの秘密はグレーの使い方にある。もともと風景画の場合、黒はあまり使わない。人物画の場合、衣服の色や髪の毛等にどうしても黒を使う必要がでてくるのだが、自然の風景の中に黒はあまり存在しないのだ。人物画家が黒を使い、風景画家が黒をあまり使わないのは、元々の特徴でもある。ところが風景画では、グレー系の色を多様するのをあまり意識しない人も多いかと思う。これは、自然の風景の場合、明度幅が広く、特に中間明度帯の幅が非常に広い。そのために中間色の描き分けが重要になり、グレー系の色調に非常に鋭敏になる。グレーの色味が豊かなのだ。この感覚をモネは初期の段階から持っており、天性の風景画家だったのだろうと思われる。ただ、自然の色味を油絵の具で再現するとなると、いろいろと問題がでてきてしまう。明度を上げる方法もそうだった。ホワイトを混ぜれば明度は上がるが彩度が下がる。古典絵画では、明度はある程度犠牲にして、グレーズを多用する事で、色の彩度を確保していた。だが、この方法では、モネの目指していた風景画は描けなかった。画面全体を明るくしたい、しかし、色の彩度も高く保ちたい。難しい命題にモネが挑んでいたのが20代の頃だ。実際に油彩画を描いている人は、モネがどんな解決策を見いだしたのかシミュレートしてみて欲しい。



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