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2014年12月25日13:41

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僕にはTV「アンタッチャブル」でおなじみのフィル・カールソン監督によるシネスコ西部劇「草原の野獣」(1958)。

NHK−BSで放送したものを録画してあったので見ました。主演はヴァン・ヘフリンとタブ・ハンター。今の若い人で、このあたりの俳優さんの名前と顔が一致する人いるのかな?というくらい地味な配役です。フィル・カールソンという監督さんを、テレビの「アンタッチャブル」以前に知っていた人も少ないと思う。“今の若い人”って、“今、僕より若い人”という意味ではありませんからね、念のため。

物語は、町ができる前から牧場を営み、この地域での有力者となったリー・ハケット(ヴァン・ヘフリン)一家の話です。腕と力で今の地位を築いたリーは、長男のエド(タブ・ハンター、写真2右)と次男のデイビー(ジェームズ・ダーレン、写真2左)にも、自分の哲学で男になるよう育てました。長男エドは、父親譲りの向こう意気で拳銃もまずまずの腕なのですが、地位のある父親を見て育ったので他人を見下す傾向がある。一方、次男のデイビーは、心優しい部分と人としての道は身に着けているのですが、いまひとつ押しが足りません。そんな兄弟が野性の馬を集めることとなり、スー族の血が入った牧童ポール(バート・コンヴィ)らを雇います。そして長年狙っていた雌の白馬を捕えようとしてエドとポールが競い、ポールが崖から落ちて死んでしまう、という展開です。ポールには妹クリー(キャスリン・グラント)がいて、同じくスー族とのハーフなので、エドが差別扱いします。一方、デイビーはまじめにクリーを愛する、という対立がある。

テレビの攻勢で斜陽となった映画界に、大型画面による劇場の魅力を売り込んだ時代の西部劇です。ワイドな画面に荒野の風景をとらえ、1950年代ならではの画面作りで楽しませます。撮影はこのころ大活躍していたチャールズ・ロートン・ジュニアですから、さすが、というまっとうな楽しみ方がまずある。そして西部というけど、いろんな西部劇に使われているハリウッド御用達の川だよなぁなんて、別の楽しみ方もできます。

時代は開拓が一息ついて、東部の法治国家意識が地方にも波及してきたころという設定で、父親リーが息子の育て方を間違ったと悔いる形で、民主主義国家賛歌としてエンドマークが出る。ま、'50年代のお約束ですね。それでもかなりシニカルな要素が、フイル・カールソン監督の持ち味なのでしょう。'60年代にはマット・ヘルム・シリーズを監督し、'70年代に「ウォーキング・トール」というヒット作により財を成したそうです。

タブ・ハンターといえば、まっすぐな青年というイメージなのですが、この映画のエドは真逆。これが意外でした。そのタブ・ハンターが右側とはいえ、ヴァン・ヘフリンと同じビリングでタイトル前に名前が出る。タイトルの後、名前が出るトップはヒロインのキャスリン・グラント。この映画の前後にビング・クロスビー夫人となり、以後は半ば引退という雰囲気だったみたいです。そしてその右側にジェームズ・ダーレン。僕は「ナバロンの要塞」以外で彼を見るのは初めてではないかと思う俳優さんです。←コロンビア映画が売り出そうとして売れなかったという意味。

こういう映画は、やはり傍役の顔ぶれが最高の楽しみでしょう。まずは保安官補として登場するミッキー・ショーネシー。元ボクサーという役どころで、エドを腕力で逮捕します。父親リーに対して、“エドのパンチは利いた”と、ちゃんとお世辞を、お世辞と取られないように言うところがいい。保安官役はロバート・F・サイモン。僕には初耳、初顔です。そして最近名前と顔が一致したはずなのに名前を思い出せなかったのが、ポールやクリーの雇い主エイベリーを演じたエドワード・プラット。リーの親心に付け込み利益を得ようとする男がレイ・ティールでした。

ポール役のバート・コンヴィは、存在感ある登場でした。さっさと死んでしまうのが残念。この映画がデビューなんですね。その後、テレビなどを含め活躍します。ほかにもimdbによるとラッセル・ソーソンらの名前があるので、もっといろいろ傍役を楽しめるでしょう。

ハリウッドのスタジオシステムが、まだまだ力があった時代、その実力を知ることができるプログラム・ピクチャーでした。
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