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2014年01月16日18:56

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現代ソビエトSF短編集

昭和44年発行のハヤカワ銀背である。45年前、おおかた半世紀前の「現代」だ。

・宇宙翔けるもの
8篇収録の旧ソ連SFの短編集だ。再販の可能性は極めて低いので、ある意味レアかな。ただし欲しがる人も少ないから、プレミアはつかないだろう。60〜70年代には、英米だけでなくソ連・東欧圏のSFもよく訳されていた。共産圏とSFという取り合わせに当時から違和感を抱いていたが、本書の作者紹介を読んで謎の一部が解けた。
作者のほとんどは科学者なのだ。つまり科学的啓蒙あるいは教養小説としての側面があるわけで、それならば共産主義との相性は悪くないだろう。

英語圏でいうならアシモフかクラーク、あるいはガーンズバックのようなタイプが主流のようだ。ブラウンやハミルトンのような純粋娯楽作家はいたのだろうか。
本書は探検や冒険を通して想像力の翼を広げる古典的な作品が多い。印象に残る作品を挙げると、

『創造の第一日』ゲオルギー・ヨシフォウィッチ・グレーウィッチ
天王星をぶった切って植民用小惑星として分割する。科学が自然をねじ伏せるのは当然だという発想が根底にあり、時代を感じさせる。
『宇宙の漂泊者』アレクサンドル・コルバコフ
宇宙船でワープするたびに、地球では数百年が過ぎている。22世紀の乗組員が戻った地球は、西暦八千年代だった。こういう効果を回避するために考えられたのがワープ航法じゃなかったのか。まあ現実に実験した人はいないから、間違ってるとは言えないけど。

『むらさきの女』アナトリイ・ドニュプロフ
その女は反物質から成る鏡像体なので、心臓が右にある。理系かSF読みは、この一文で吹き出すだろう。分子構造とマクロな解剖学を混同してます。その上、反物質ですよ。
表題作にはフッ素人間が、『プロクシマ目指して』ウラジミール・サフチェンコには金属生命が登場する。いずれも現代の視点で見ると単調すぎるが、文化風俗資料としてたいへん興味深く読ませてもらった。★★★
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