今日は全社一斉特別休暇。というわけで先週に続いての三連休。さらに今日は世間では平日。
というわけで、空いていることを見込んで、新宿の東郷青児美術館で開催中の「アンソール展」に行ってきた。もっとも、土日でもそんなに混まないのだろうが…。
私はベルギーのジェイムズ・アンソールという画家が大好きである。
ベルギーといえばビールとチョコと象徴派絵画である。その象徴派絵画の先駆者だと思うのがアンソールである。ベルギー以外に視点を広げれば、ムンクやモローやルドンとともに表現主義の先駆けというふうにも言えると思う。
不気味なのだがどこか憎めない仮面をたくさん描いた人である。
一昔前はアンソールという名前自体があまり知られていなかったし、アンソール好きということがわかると「あんたヤバイ系の人?」というような目で見られることも少なくなかった。
今では絵画史上の重要人物であるとの評価が定まり、頻繁に展覧会も開かれている。日本人は結構アンソールが好きなのかもしれない、などと思うこともある。
しかし、ヤバイ絵を描いていたというのは間違っていない。
もちろん、アンソールも最初からヤバイ絵を描いていたわけではない。
初期の風景画や室内画にも独特の味がある。北海に面するオステンドという街の雰囲気なのか、曇天の模糊とした印象の作品が多い。北国の寒さが画面に閉じ込められているような気がする。
孤独感や寂寥感が漂う。それなのにどこか馴染み深い風景のように思える。
どうやら私の気質は南国よりも北方のたたずまいの方が合うらしい。
とはいえ、アンソールといえば仮面、仮面といえばアンソールである。
今でもヤバイのだから、当時のヤバさ加減は半端ではなかったろう。アンソールには悪いが、受け入れられなくても当然のように思う。
しかし、単にヤバイだけでなく、どこか滑稽なところもあるのだ。
そりゃそうだ。アンソールにとっての仮面は人間の本質を映し出すもの。醜悪なものだけでなく、滑稽なものがあっても当然だ。見慣れてくると、どの仮面も可愛く見えてくる。
愚かで醜く浅ましい。それゆえに愛すべき生き物なのだろう、人間というものは。
なのでアンソールの絵には絶望がない。そういったものを超越したところにその作品は存在する。
やはり凄い。
今回はアントワープ王立美術館の名品が多数来ている。言ってみればアンソールのお膝元である。
アンソール作品の中でも極めつけの名作を見ることができる。
ただ、いかにもアンソールといった作品は少なかったため、少々食い足りない感は残る。
とはいえ、アンソールが影響を受けた先達の作品、あるいはお互いに刺激し合った同世代の画家の作品を対比させての展示はとても興味深いものだった。
ちなみに、アンソールは作曲もしたそうである。
曲としてまとまったものは少ないようだが、アウラのアレンジャーとして知られるshezooさんがピアノ曲としてまとめて、アルバムにしている。現在は廃盤になっているが、再発の予定もあるらしい。
ますます、アンソールという人に興味が出てきた。
仮面という姿を借りて人間の本質を描こうとしたアンソール。
この展覧会はそんなアンソールの画業を振り返るのに相応しい。
美とは綺麗なものばかりではない。
あらゆるものに美を見出せるかどうか、アンソールの作品を観て試されるのはその人の審美眼である。
そういう点でもコワイ絵と言えよう。
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