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2012年09月13日23:23

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サファイアと白ゆき姫

買ったまま読んでいなかった、湊かなえの近作二作を読んだ。

まずは『サファイア』。
これは宝石に因んだ物語を集めた短編集。通底するテーマは「恩返し」ということなのだろうか。
しかし、この作家のこと、一筋縄ではいかないような話ばかりである。
どこにでも転がっていそうな話題を取り上げ、ストーリーとしてのふくらみを持たせる上手さはさすがと思う。
真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、サファイア、ガーネット。
どれもひねりが効いている。
きっちり「余りが出ずに、割り切れる」結末になっているのだが、『猫目石』だけはちょっと違った印象を受ける。作風という点では『ダイヤモンド』がちょっと特殊か。リアルを追求する作者には珍しいファンタジー的要素がある。
ちなみに表紙のデザインは清川あさみ。

さて次は長編『白ゆき姫殺人事件』。
メッタ刺しにされ火をかけられて死亡した美人OL。
容疑者と目される人物について語る同僚、友人、故郷の人々。
ネットや週刊誌を通じて拡散する人物像。
これは犯人探しというよりも、人の話の怖さを描いたものだと言えよう。語りたがりの言うことほど当てにならない。しかも記者は都合のいいように情報を再構築する。
黒コゲの死体と聞いて「はは〜ん、あの古典的トリックのバリエーションか」と思った人もいると思う(私のことです)。しかし、あれは現代には通用しないことを忘れてはならない。
そして、この小説がいわゆる「信頼できない語り手」のトリックであることは早々に気付く。異色なのはほとんど全ての語り手が信頼できないということだ。
ここまで書いても実は全くネタバレにはなっていないのでご安心を。

構成としておもしろいのは巻末に資料として、ツイッターのログや、週刊誌の記事がそれふうの体裁で載っていること。なかなかユニークな試みだし、成功していたと思う。

まあ、一言で言うなら「怖い小説」だ。

自分が犯罪者になったとき、みんなは自分のことをどう語るのだろう、と思わず考えてしまう。
あることないこと言われるのはイヤだなあ、と犯罪抑止に効果があるのでは、なんてことを思う。

TVドラマ化前提で書かれた『境遇』は、そうした制約もあってか、小ぢんまりとまとまってしまっていた。食い足りない感があったことは否定できない。
『サファイア』も『白ゆき姫』もそのもやもやを吹き飛ばすような快作である。

いずれも世評はあまり高くないようだが、そういう人たちは何を期待しているのだろう、と思ってしまう。
『告白』こそ最高傑作という向きも多いのだろうが、私は『告白』はいささか力技に頼り過ぎているように思う。全てをきっちり「割り切る」ために強引な部分が見受けられるのだ。物語のための物語と言ってもいい。もちろん『告白』は傑作だと思う。ただ、日常の怖さという点では近作の方がよりリアルである。
衝撃度は少ないが、ジワジワ来る怖さと言えるだろう。ある意味、わかりにくい、というか直截的ではなくなったということも言えるだろう。
そのあたりが評価を分けているのかもしれない。

なんにせよ、私は十分に楽しめた。
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