mixiユーザー(id:3696995)

2011年10月13日23:12

1054 view

癒しのシンフォニー

アラ・パヴロワ(Alla Pavlova)という人をご存じだろうか。
ロシア(ウクライナ)生まれのNY在住の女流作曲家である。1952年生まれというから、完全に戦後世代である。
現在までに交響曲を6曲書いていて、これがなかなかいいのだ。
まさに現代に作られた曲だが、全くゲンダイオンガク的ではない。

癒しという言葉が簡単に使われすぎて安っぽい意味に堕してしまった昨今、この言葉を使うには抵抗があるのだが、パヴロワの交響曲を一言でわかりやすく伝えるとするならば「癒しのシンフォニー」ということになると思うのだ。

まずは5番だろうか。
5楽章構成で50分近くかかる大作である。(写真中央)
しかし、ほとんどがゆったりした音楽。アダージョ楽章が5つ連なると言ってもいい。弦楽を中心にしたオーケストレーションは静謐な響きを醸し出す。切なくなるようなロマンティシズム。ネオ・ロマンティシズムなんていうものではなく、よくもまあ臆面もなくと言いたくなるようなレベルである。ちょっと間違うと甘ったるいセンチメンタリズムに陥ってしまいそうなのだが、交響曲として聴けるのは、やはり理性で律している部分があるからなのだろう。
泣きに泣くが、慟哭となる手前で抑制がかかっている。それゆえ、凛としたたたずまいになっている。耳に優しい抒情的なメロディーが連綿と続くのだが、不思議に飽きない。
妙な話だが、夏場に聴くと涼が取れるだろうなあ、という気がする。
まあ、癒されるかどうかはともかく、安らぎや慰めに満ちているのは確かだ。
れっきとした交響曲なので大曲を聴いたという満足感もある。

続く最新作6番はゴッホの『星月夜』にインスパイアされた作品。ジャケットにも使われている。4楽章で40分ほど。(写真右)
これもまあ、5番と同じような雰囲気の曲だ。5番よりも若干メリハリがあるかもしれない。が、基本は同じ。むしろ5番よりも聴きやすいかも。音の質感はやはりひんやりとしている。クリアーでリリカル。
どんな前衛音楽よりもむしろ新鮮に聴こえるから不思議なものである。

5番より前の曲もおおむね似たような曲調である。
ワンパターンという批判もあろうが、ここまで徹するとむしろ個性だと思う。
世の中がこういう音楽ばかりだと困ってしまうが、こういう音楽はあってもいい。

1番は『さようならロシア』という副題を持つ室内交響曲。
いちばんゲンダイオンガク的な曲かもしれない。ただ、わかりやすいフレーズが散りばめられているので、そう聴きにくくはない。
祖国との訣別がテーマなのだろう。いろいろ複雑な事情があったであろうことが想像できる。

2番は『新世紀のために』という副題を持ち、あの9.11を受けて作られたのだそうだ。
犠牲者を悼み、世界の平和を願うような優しさと慰めと音楽だが、4楽章のうちに第2楽章だけは珍しく激しさを感じさせる音楽である。理不尽な暴力に対する怒りの感情だろうか。そうした怒りの感情を擁しつつ辿り着いた静謐の表現であるかと思うと、感慨深いものがある。
甘いセンチメンタリズムとは一線を画す。

3番はよりリリカルによりゆったりとした4楽章の大曲。ギターが含まれているようだ。
後の5番や6番につながる作品。

4番は20分弱の単一楽章。オルガンが加わるが、スペクタクルな曲には全くなっていない。オルガンの響きが加わっているためか、敬虔な祈りが感じられる。

naxosから全ての交響曲のCDが出ている。
中でも2番と4番のカップリングでは、あのウラジーミル・フェドセーエフが指揮をしているということで話題になったらしい。(写真左)

何年か後には7番が作られるのだろう。
同時代の作曲家の新作を楽しみにできる。これってとっても贅沢なことかもしれない。
2 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2011年10月>
日 月 火 水 木 金 土
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031