mixiユーザー(id:3696995)

2011年08月04日23:00

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大好きなピアニスト

先日、このところマイルスを聴いているといったようなことを書いた。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1756415322&owner_id=3696995
そうなると必然的にレッド・ガーランドを聴きたくなるのだ。

マイルス・クインテットのピアニストである。バップ期のマイルスからは絶大な信頼を得ていたという。ガーランドが自分のリーダー・アルバムを出したいというのを、バンドを辞めてしまう危機と感じたマイルスは「失敗するからやめろ」と反対したというエピソードが残っている。真偽はともかく、マイルスにとって大事なピアニストだったのは間違いないだろう。
やがてモードを探求していくマイルスとは袂を分かつことになるのだが…。

大好きなピアニストである。

モダン・ジャズの名ピアニストであることに異論はないだろう。
バド・パウエル系の「指が動いちゃってしょうがない」というタイプのピアニストだ。
良くも悪くも新しい音楽には興味がなく、モードやフリーといった新しい時代を迎えると、さっさと引退してしまった。
もともと彼はボクサーだったそうで、それがボクシング好きのマイルスの目に止まり抜擢されたという説もある。

結局マイルス・クインテット在籍時からリーダー・アルバムを作り始め、ピアノ・トリオを中心にアルバムを量産した。クインテットの同僚でもあった若い頃のジョン・コルトレーンを支えたピアニストとしても知られている。
マイルスの言ったように「失敗する」どころか、大成功だったわけだ。もっともマイルスには成功するという確信があったはずである。

ピアノ・トリオの名品中の名品と言われるのが『Groovy』である。
冒頭のエリントンの『C Jam Blues』からノリノリだ。『Gone Again』は得意の歌もの。ロマンティックだね〜。『Will You Still Be Mine?』はそれこそ「指が動きすぎちゃってさあ」というような演奏。この(LPだと)A面3曲でガーランドがどんなピアニストだかよくわかる。最後に収められた唯一のオリジナル『Hey Now』はガーランドの手クセをそのまま曲にしたような感じだ。
華麗なブロックコードときらびやかなシングルトーンという、いわゆるガーランド節をたっぷり聴くことができる。
ベースにはマイルス・クインテットの同僚ポール・チェンバース、ドラムには堅実なアート・テイラーを起用。デビュー盤から続くこのトリオは相当な人気だったようだ。ドラマーにケンカ腰のフィリー・ジョーではなくアート・テイラーを選んだのもミソだったような気がする。
この『Groovy』、ジャケットもカッコいい。実はこのデザイン、吉祥寺のジャズクラブ、サムタイムの壁に再現されている。(今でもあるのかな…?)

まあ、『Groovy』がベストというのには賛否があるだろうが、世間に広く認知された名作と言う点では彼の作品中トップだろう。
で、二番手はどうなるかというと、これはもう何を持ってきてもたいてい納得できてしまうような気がする。というわけで、完全に好みに走る。
『All Kind Of Weather』を選ぼう。タイトル通り、天気や季節をテーマにした曲ばかりを集めた一種の企画盤。曲名を列挙すると『Rain』『Summertime』『Stormy Weather』『Spring Will Be A Little Late This Year』『Winter Wonderland』『'Tis Autumn』ということになる。ガーランド版『四季』とも言えそうだ。チェンバース、テイラーとのコンビの最終作でもある。
メロディーの綺麗な曲ばかりだから、ガーランドのピアノが映えに映える。

で、裏ベストと思っているのが『When There Are Grey Skies』という引退前の最後のアルバム。ガーランドのアルバムでどれか1枚だけを選ばないといけないとしたら、これを選ぶ。
美しいピアノの音色はそのままに、寂莫感漂う心象風景。音数も少なく慈しんで弾いているような感じだ。ブラームス晩年の室内楽に通じるような晩秋の世界。カクテル・ピアニストと揶揄されることも多かったというガーランドの到達点。これはもうアートの領域。実は大傑作だと思っている。確かにこの後に何を作れというのだ、という気さえしてしまう。
ベースにはウェンデル・マーシャル、ドラムにはチャーリー・パーシップという渋いところを起用してきた。パーシップというドラマー、結構好きなんだよね。特にこの盤でのプレイは冴えに冴えている。

というわけで、また語ってしまった…。

結局ガーランドのようなピアノを弾く人が現れることはなかった。
モードやフリーといった時代の中では無理もないが、4ビートジャズが戻ってきた今でもそういうピアニストはいない。
バド・パウエルやセロニアス・モンクやビル・エヴァンスのように時代のイノベーターではなかったかもしれないが、歴史に残るスタイリストであったことは間違いないだろう。
ノリノリの『C Jam Blues』、おそらく誰もがどこかで聴いたことがあると思う。

闘うことに倦んだ元ボクサーは永遠のメロディーを紡ぐことを選んだ。
レッド・ガーランド、ピアノで紡いだ名盤の数々。

お、「美の巨人たち」みたいな終わり方!
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